イベント

2025.12.09(火)

「漁業・養殖業におけるスマート化の推進勉強会」で
JAXA水産担当の桑原が講演しました

水産業スマート化に向けた取組

2025年11月27日福岡の九州ビルにて「漁業・養殖業におけるスマート化の推進勉強会」が開催され、JAXA第一宇宙技術部門 衛星利用運用センターで水産分野への衛星利用を担当している桑原 朋研究開発員が「JAXA衛星リモートセンシングと水産業スマート化に向けた取組」について発表しました。

勉強会での講演の様子

現在、漁業・養殖業では水産業のスマート化に向け、それまで経験や勘に頼っていた部分をICT、IoT などの先端技術の活用により、海流、水温、塩分濃度などの環境データを収集・分析し、漁場の予測などに活用し、水産資源の持続的利用と水産業の産業としての持続的成長の両立を実現する次世代の水産業、「スマート水産業」として取組が進められています。JAXAの衛星データも色々なところで活用されています。

参考:Earth-graphy 農林水産業

宇宙からの海洋観測データのスマート水産業での活用について

海面水温、クロロフィルa濃度の漁業活用事例

講演では観測画像を交えながら、人工衛星で海面水温やクロロフィルa濃度(※1)、懸濁物質濃度(※2)などのデータを得ることが出来ることを紹介しました。そして、得られるデータを組み合わせることによって漁場を推定し漁業スマート化に向けた衛星利用が定着していることや、衛星データだけでなく船舶やブイなど現場から得られる情報と組み合わせて使用することが大切だと説明しました。例えば赤潮では、衛星による観測の確度を高めるために現場の情報と組合わせことが重要です。

また、養殖業のスマート化の取組として、250mという高い空間分解能(※3)を持つ気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)による内湾観測の活用について、広島県や佐賀県の事例を紹介しました。(詳しい内容は令和6年度水産白書でも紹介されています。)広島湾では現地研究機関や漁業者様の協力を得て、現地での観測データと衛星データの比較検証が行われました。岸に近い海面水温のデータは陸の影響などで衛星の観測誤差が大きくなるが懸念されますが、検証では水中に設置した水温ロガーのデータと衛星観測データを比較した結果、良い相関関係が得られており、沿岸養殖業でも十分に活用できる情報であることが示されました。

豪雨によって能登半島周辺の海が濁っている様子

加えて、現地確認が困難となる地震、豪雨、台風などの自然災害時でも衛星は継続的に観測します。JAXAの合成開口レーダ(SAR)衛星である陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)は災害発生に応じた緊急観測を行っています。被害状況の把握にも寄与することや、災害発生から時間経過後の養殖物への影響について、衛星データによる継続的な確認について提案しました。

衛星データを見る方法

スマート水産業で活用できる衛星データを見る方法として、「JASMES Image Analyzer」「AMSR Viewer」などのサイトを紹介いたしました。これらのサイトは無料でご利用いただけます。

JASMES Image Analyzer

JASMES Image Analyzer

JASMES Image Analyzerは「しきさい」や類似する衛星データの閲覧・時系列分析に特化しています。全球の気候変動に係る諸物理量(地表面温度、海面水温、クロロフィルa濃度など)をマップ表示できます。日々の観測データの他に月平均値、平年値との偏差など統計データも含め、日本周辺海域に限ってフル解像度で利用できます。

AMSR Viewer

AMSR Viewer

AMSR地球環境ビューア(AMSR Viewer)はJAXAの高性能マイクロ波放射計AMSRシリーズのデータを表示する観測データ(輝度温度)と水循環に関わる様々な物理量をマップ表示できます。

参加者からは「国内の衛星データでこれだけ沿岸が見える時代になっていたとは驚いた。帰ったらデータを見てみようと思う」「自身の会社や組織で衛星データを利用してみたい。今後技術的なサポートなどご相談させてほしい。」と利用に向けてのお言葉もいただくことができました。当日の講演内容は後日、一般社団法人マリノフォーラム21様のスマート水産業ナビより公開予定です。そちらもあわせてご覧ください。

このような講演はこの他にも水産庁が実施しているスマート水産業現場実装委員会の活動の一つとして、「水産現場の省力化・効率化に向けた衛星データを利用したスマート化」を目標とし、出前授業を水産・海洋高等学校、漁業学校向けにも実施しております。ご希望に応じて実技も交えた対応も可能ですので、ぜひお声がけください。

※1:クロロフィルa濃度 海表層における植物プランクトンに含まれるクロロフィルa(光合成に必要な色素)の濃度を表す指標。漁場の推定や海洋水産資源の分布、海域における炭素循環の把握などに活用されている。
※2:懸濁物質濃度 水中に浮遊している微細な固体粒子の濃度を示す指標。これらの粒子は、土壌の侵食、河川からの流入、海底の攪拌、または人間活動による排出物などによって水中に存在します。光の透過性に影響を与え、水質や生態系に大きな影響を及ぼすため、環境モニタリングなどに活用されている。
※3:空間分解能 人工衛星の性能を測る指標の一つとして、地上の物体をどれくらいの大きさまで見分けることができるかを示す能力。「しきさい」の場合、分解能250mの性能を有し、1,000km以上の幅を1度に観測する人工衛星としては世界最高級である。

<関連サイト>
JAXAとNTTがAIで衛星データを読みとく ~海洋のモニタリングで、人間社会と海洋生態系の共生をめざす~
JAXAサテナビチャンネル
今回講演した桑原がさてライフメンバーとして多数の動画に登場いたします
Earth-graphy 農林水産業

最新情報を受け取ろう

公式ソーシャルアカウント