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第一宇宙技術部門について

第一宇宙技術部門は、人々の暮らしに直接役立つ「人工衛星」の開発・利用を進める部署です。

具体的には、地球環境の観測・災害監視への取り組みや通信・測位技術の発展につながる研究開発などに取り組んでいます。これら取組みを通じて、人工衛星を利用して行われるナビゲーション、災害状況の把握など私たちの暮らしを宇宙空間から見守り支える業務を行っています。また、海氷や森林、温室効果ガス等を継続的に観測し、パリ協定など気候変動、地球規模課題の解決や持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目指す業務も行っています。様々な省庁、国際機関を含めた関係機関、大学、民間企業などとの連携を進めながら、人々の暮らしへの貢献を行っています。

部門長挨拶

みなさま、こんにちは。JAXA第一宇宙技術部門 部門長の瀧口 太です。

第一宇宙技術部門は、安全で豊かな社会を宇宙技術で支えることを理念としており、みなさまの生活に役立つ人工衛星の研究開発、実証運用、利用研究そして利用推進を行っています。わが国の衛星利用は1980年代まで遡りますが、JAXAの前身の宇宙開発事業団(NASDA)は、気象庁、NTT(日本電信電話株式会社、当時は日本電信電話公社)、NHK(日本放送協会)といった運用機関と一体となり、気象衛星(ひまわり:GMS)、通信衛星(さくら:CS)、放送衛星(ゆり:BS)の 実用化を行いました。そこから半世紀後、これらは当たり前のインフラとして定着し、運用機関が自ら衛星を整備する時代となりましたが、第一宇宙技術部門は、社会課題の解決に貢献する新たな研究開発に取り組み続けています。特に近年、気候変動や自然災害に代表される地球規模課題、日々進化し続けるデジタル社会を支える通信インフラの高速大容量化、安心・安全に必要不可欠な位置情報・空間情報の高度化、といった領域に求められる研究開発にチャレンジし、宇宙開発利用の可能性を広げています。

地球観測分野においては、1978年に地球観測センター(EOC)を設立して、米国NASAの地球観測衛星「Landsat-1」(ランドサット1号)の受信から始め、1987年には、わが国初の地球観測衛星「もも1号」(MOS-1)の開発・打上げに成功しました。以降、「ふよう1号」(JERS-1)、TRMM/GPM/PMM、「みどり」(ADEOS)/「みどりII」 (ADEOS-II)とその系譜を継ぐ「しずく」(GCOM-W)/「しきさい」(GCOM-C)、ALOS(だいち)シリーズ、GOSAT(いぶき)シリーズ、「はくりゅう」(EarthCARE)と続き、地球環境の変化を捉えた40年以上に亘るデータセットを有しています。これらのデータは、EOCから暖簾分けして1995年に設立された地球観測研究センター(EORC)によって評価解析研究が行われ、様々な成果を生み出しています。JAXAが提供するデータや情報は関連する専門家の皆様にも広く認知されており、NASA/NOAA/ESAを始めとする国際パートナーからも高い評価を得ています。
今年は、「もも1号」が航空宇宙技術遺産に認定され、EORCが30周年を迎える記念すべき年となりました。また衛星利用運用センター(SAOC)を中心に、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)の災害監視プロジェクトとして取り組んでいるセンチネルアジアも20周年を迎えます。地球観測は色々な分野でインフラとしての定着が始まっており、持続可能な未来を築く上で重要な役割を担うようになっています。これからも、国の宇宙機関として技術の高度化を取り入れながら、着実に観測を継続し、課題解決につながる研究開発やアウトリーチ活動を進めて行きます。

通信分野では、先に述べた実用衛星導入以降、1990年の日米衛星調達合意により、実用衛星調達と研究開発が明確に区分けされたことにより、JAXAは宇宙活動のインフラとなるデータ中継衛星の開発に長年取り組んできました。「きく6号」(ETS-VI)、「かけはし」(COMETS)、「こだま」(DRTS)と順を追って発展させていくこととしていましたが、「きく6号」は衛星不具合、「かけはし」はロケット不具合により、いずれも静止化できなかったところ、ようやく「こだま」によって「だいち」(ALOS)との衛星間通信に成功しました。「こだま」は15年稼働したのち運用終了しましたが、この技術は光データ中継衛星(JDRS)の政府ミッションに引き継がれ、現在も安全保障インフラとして安定した動作を続けています。また、データ中継における衛星間通信に光通信を導入することについても早くからチャレンジしてきました。20年前、「きらり」(OICETS)と欧州ARTEMIS衛星との双方向光通信に世界で初めて成功し、現在ではJDRSと「だいち4号」(ALOS-4)との間で世界最高速での光衛星間通信を成功させています。高速・長時間の光衛星間通信によって、地球観測衛星が取得した大容量データを適時に地上へ送ることが可能となり、災害時の迅速な観測対応能力を向上させました。40年近いデータ中継衛星の研究開発成果の積み上げが、安心・安全を支える宇宙活動のインフラとなっています。光衛星間通信は、衛星コンステレーションを支える重要な技術として、さらなる発展が期待されています。
一方、衛星通信や衛星放送の高度化に向けた研究開発と実証実験については、古くから国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)とも連携しており、デジタル化に対応した高速化・大容量化のみならず、通信サービスにおける新たな課題にも取り組んでいます。「きずな」(WINDS)や「きく8号」(ETS-VIII)では、実際に東日本大震災の被災地への支援も行いました。現在開発中の「技術試験衛星9号機」(ETS-9)では、有限の周波数を柔軟かつ効果的に使用するためのフルデジタル通信ペイロード(FDP)技術を開発しており、次世代の衛星通信のニーズに応えるための先行研究開発を行っています。ミッションの高度化に必要とされる衛星バス技術についても、技術試験衛星シリーズとして開発を行っています。「きく6号」で国産2トン静止衛星バス、「きく8号」で国産3トン静止衛星バスを開発し、「きく8号」で開発した技術は、国内衛星製造企業の商用バスに発展しています。現在は「技術試験衛星9号機」によるオール電化バスを開発しており、商用バスの競争力強化につなげることとしています。通信衛星については、既に市場形成がなされているため、国内衛星製造企業の競争力強化のために、国の研究開発機関として寄り添っていくことが今後も必要です。

衛星測位分野は、1980年代の米国GPSの登場後、カーナビゲーションやスマートフォンなどのアプリケーションによって、あっという間に社会に浸透しましたが、現在では、米国以外の複数の測位衛星システムも存在し、マルチGNSSとしての利用が進んでいます。わが国の測位衛星システムは全球規模ではなく、日本域でのサービスを主眼にした準天頂衛星システム(みちびき)で、当初はGPSの補強・補完でしたが、内閣府による実用化が進められ、4機体制の確立後、自律化に向けた7機体制が今年度に完成する予定です。さらには、11機体制への拡張も計画されています。JAXAは、研究開発機関として準天頂衛星システムの高度化に対する貢献を行っています。特に、7機体制を構築する5号機/6号機/7号機には、JAXAが開発した高精度測位システム(ASNAV)が搭載されており、5号機/6号機/7号機での検証を行った後、11機体制では標準装備される予定です。また国土地理院とも協力して、GNSSとしての研究にも取り組んでいます。これまでの歴史からしても、地理空間情報の高精度化は、安心・安全な社会を構築する上で極めて重要であり、更なる衛星測位精度の向上を目指した研究開発を行っていきます。

しかし、私たちの研究開発成果がみなさまのお手元に届き、当り前の存在となるには、私たちだけの力だけでは決して成し遂げることはできません。これからも国内外のパートナーや民間事業者との連携を強化し、AIなどの他分野の技術との融合も促進していくことが必要です。また、社会インフラとしての成熟に至るには、みなさまに育てていただく時間も必要です。わが国の宇宙開発も半世紀が過ぎましたが、まだまだ研究開発として取り組むべき課題がたくさんあります。これからも、みなさまのご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。

JAXA第一宇宙技術部門 部門長
瀧口 太

組織図

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事業所(見学案内)

第一宇宙技術部門(事業推進部、各プロジェクトチーム、地球観測研究センター、衛星利用運用センター)では、筑波宇宙センターを主要な拠点として人々の暮らしに直接役立つ「人工衛星」の開発・利用を進めています。地球観測センター、西日本衛星防災利用研究センターの運用も行っています。

各事業所の見学案内、その他のJAXAの事業所・施設の紹介は下記リンク先のページをご参照ください。

筑波宇宙センター

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筑波宇宙センターは筑波研究学園都市の一画にあり、1972年に開設しました。約53万平方メートルの敷地に、研究学園都市にふさわしい緑ゆたかな環境と最新の試験設備を備えた総合的な事業所です。

当センターでは、JAXAの推進する活動のうち、

・宇宙からの目となる人工衛星の開発・運用およびその観測画像の解析
・「きぼう」日本実験棟を用いた宇宙環境利用や、宇宙飛行士養成と活動推進
・ ロケット・輸送システムの開発と、技術基盤確立のための技術研究推進

を行っており、日本の宇宙開発の中枢センターとしての役割を果たしています。

〒305-8505 茨城県つくば市千現2-1-1 地図を見る

地球観測センター

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私達の生活している地球の環境状態を、人工衛星から観測するリモートセンシング技術。
今日重要な役割を果たしているこのリモートセンシング技術の確立・発展のため、1978年10月、埼玉県比企郡に地球観測センターが設立されました。緑豊かな自然に囲まれたセンター内には、巨大なパラボラアンテナがあり、日々、衛星からのデータを受信して、筑波宇宙センターに送ります。ここで処理されたデータは国内外の地方公共団体、研究機関、大学などに提供され、環境問題の解明や災害監視、資源調査といった分野で活用されています。

〒350-0393 埼玉県比企郡鳩山町大字大橋字沼ノ上1401 地図を見る

西日本衛星防災利用研究センター

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西日本衛星防災利用研究センターは、西日本における衛星データの防災利用等に係る拠点として、衛星データの利用・研究を推進します。

〒755-0195 山口県宇部市あすとぴあ4-1-1 山口県産業技術センター内 地図を見る

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