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2026.01.20(火)

【イベントレポート】国内外から約330名が参加したEarthCARE衛星(はくりゅう)のワークショップ「EarthCARE Science and Validation Workshop 2025」

雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)のワークショップ「EarthCARE Science and Validation Workshop 2025」(日時:2025年12月1日(月)~5日(金)・会場:東京大学弥生講堂)を開催しました。国内外からの約330名が参加し、打上げ後約1年半の間に蓄積した観測データを利用した科学研究や検証活動の成果など、さまざまな発表や議論が活発に行われました。

図1:EarthCARE Science and Validation Workshop 2025 キービジュアル

JAXAと欧州宇宙機関(ESA)の共同ミッションであるはくりゅうは、2024年5月の打上げ後も順調に観測を続けています。本ワークショップははくりゅうの打上げ後初となる科学成果を発表するワークショップで、JAXAとESAが主催、情報通信研究機構(NICT)と東京大学大気海洋研究所が共催しました。5日間の会期中に国内外から総計328名(現地216名、オンライン112名)が参加し(図2)、全199件の発表(口頭発表105件、ポスター発表87件、デモ発表7件)がありました。
オープニングセッションでは、本ワークショップの主催・共催より、JAXA第一宇宙技術部門の瀧口太部門長、ESA地球観測局のSimonetta Cheli局長(ビデオメッセージ)、NICT電磁波研究所の中川勝広所長(NICT安井元昭理事の代理)、東京大学大気海洋研究所の佐藤正樹教授がそれぞれ開会挨拶を行いました。また初日の12月1日より、はくりゅう搭載の4つのセンサの観測データを組み合わせたデータセット「3センサ複合プロダクト」および「4センサ複合プロダクト」の一般提供を開始しました。それらのプロダクトに関する特別セッションでは、開発者らによるプロダクトの紹介や精度評価についての発表・議論が行われました。

3センサ複合プロダクトと4センサ複合プロダクトの公開に関する詳細はこちら:
EarthCARE衛星「はくりゅう」の全観測データの一般提供を開始しました!

図2:ワークショップ参加者の集合写真

動画1:EarthCAREワークショップのようす

■はくりゅうを使った新たな雲・降水研究

科学研究に関する基調講演には欧州中長期気象予報センター(ECMWF)のロビン・ホーガン氏や名古屋大学の増永浩彦准教授が登壇しました。両氏は、はくりゅうの観測データが雲・降水メカニズムの理解を飛躍的に進めていることを強調し、今後の雲降水研究のさらなる発展への期待を述べました。特に、JAXAとNICTが開発した雲プロファイリングレーダ(CPR)は、雲粒の上下の動きを示す「ドップラー速度」を観測する機能を備えた世界初の衛星搭載雲レーダです。これまでの衛星観測では困難だった雲粒や大気の鉛直運動のデータに注目した議論ができるようになり、例えば雲から降水・降雪にいたるまでのプロセスに関する解析や、雲内部の対流の活発度合いを解析する研究が多くみられました。これらを気候・気象モデルに利用することによって、雲から降水・降雪の生成プロセスを精緻に再現できるようになり、予測精度を向上させることが期待されています。
さらにJAXAは、はくりゅうと全球降水観測(GPM)計画主衛星の観測データを組み合わせ、雲・降水に関する同時観測データセットを開発したことについても紹介しました。こうした複数センサや他衛星とのデータ複合利用によって、単独センサ観測ではとらえきれなかった現象の理解が進み、雲・降水研究やモデル精度向上の新たな可能性が大きく広がります。

■カナダの森林火災による煙の分布を高精度に解析

同じくはくりゅうに搭載されているESAの大気ライダ(ATLID)は、大気中の浮遊物質(エアロゾル)の鉛直分布を詳細に観測することができます。今回のワークショップでは、2025年5月にカナダで発生した大規模な森林火災による煙についての解析事例が注目されました。煙がどの高さに分布していたかを詳細に調べた結果や、全球を観測するはくりゅうの複数のデータをつなぎ合わせた結果として、煙はカナダ周辺にとどまらず北半球に広く輸送されたことが報告されました。

■気象・気候モデリングへのはくりゅうデータ利用の進展

はくりゅうの観測データは、気象予報や気候予測にも役立てられます。気象・気候モデルのセッションでは、気候モデルMIROCや全球雲解像モデルNICAMを開発している日本のモデリングコミュニティや、気象庁気象研究所、ECMWFといった気象数値予報の現業機関より、はくりゅうのデータ利用によってモデル改善の取り組みが進展していることが示されました。さらにECMWFからは、2026年前半にはくりゅうのデータを現業の数値気象予報に組み込むとの発表がありました。
雲やエアロゾルは、太陽からのエネルギーを反射したり地球からの熱を閉じ込めたりすることによって大気を加熱・冷却するはたらきがあり、気候変動の予測において重要な因子です。さらに、正確な気候予測のためには、エアロゾルの周りに水蒸気が集まって雲が形成されたり、降雨によってエアロゾルが除去されたりするなどの、雲とエアロゾルの相互作用も詳細に考慮する必要があります。はくりゅうのデータ活用は、こうした雲やエアロゾルの働きを正確に捉え、気候変動予測モデルの不確実性を低減することに貢献が期待されており、IPCC(気候変動政府間パネル)報告書における気候変動予測精度の向上を目指しています。

■感謝状贈呈式

初日の12月1日(月)には、これまでの「はくりゅう」ミッションに多大なご貢献をいただいたメーカー各社ならびにサイエンス関係者各位に深く感謝の意を表し、感謝状贈呈式を開催しました。贈呈式では、JAXA第一宇宙技術部門の瀧口太部門長より、7社、3団体、2個人の皆様に感謝状及び副賞を贈呈しました。

感謝状贈呈式の詳細はこちら:
雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)に関する感謝状贈呈について

■次回のワークショップ

次回のワークショップとなる「EarthCARE Science and Validation Workshop 2026」は、2026年6月8日(月)~12日(金)に、英国オックスフォードにて開催予定です。

(参考)
EarthCARE Science and Validation Workshop 2025(ウェブサイト)
雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)全観測データの提供開始に関する記者説明会(JAXA Youtube)

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