最新情報
- イベント 2026.01.28 (水)
- お知らせ 2025.12.23 (火)
- イベント 2025.12.09 (火)
ミッション
宇宙から気候変動を監視する。
GCOMは、宇宙から地球の環境変動を長期間に渡って、グローバルに観測することを目的とした人工衛星プロジェクトで、地球環境変動観測ミッション(Global Change Observation Mission)の英語略です。 このミッションの中で、大気や植生などに関わる観測を気候変動観測衛星「しきさい」 が担います。「しきさい」は、NEC(日本電気株式会社)がプライムメーカーとして設計・製造を担当しました。
JAXAサテナビチャンネルでもゆる~くご紹介しておりますので、是非ご覧ください。
参考:【この兄弟が最強?】気候変動のメカニズム解明に挑むJAXAの地球観測衛星をご紹介!

(左上)観測地:モーリタニア/サハラ砂漠 「サハラの目」 観測日:2020年8月27日
(右上)観測地:ボツワナ オカバンゴデルタ 観測日:2020年7月23日
(左下)観測地:インド バングラデシュ 観測日:2020年2月12日
(右下)観測地:エベレスト 観測日:2022年12月2日
衛星の愛称である「しきさい」は同時に打ち上げられた超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)と共に、一般公募され、「彩り豊かなイメージが、多波長を観測可能な多波長光学放射計(SGLI)により、植生、海洋、雪氷等、多くの観測対象をもつGCOM-Cの特徴を的確に表しているため。」という選定理由で選ばれました。
その名の通り、「しきさい」は美しい地球の姿を届けてくれており、地球環境変動観測ミッション(Global Change Observation Mission)という同じミッションを持つ、兄弟衛星でもある水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)と共にInstagram(@gcom_jaxa)にて画像を公開しています。また、「しきさい」が実際に観測したデータに基づいて音楽に変換した動画また、Hear the Earth -地球が聴こえる-も公開しています。「しきさい」が観測した美しい画像と共にお楽しみください。
温暖化する地球

画像は、2020年8月11日に気候変動観測衛星「しきさい」が観測した、関東の地表面温度です。
関東の一番濃い赤の部分は約55℃と非常に高温となりました。
ここ100年の間に世界の平均気温が0.85℃上昇したという報告があります。 1950年代以降に観測された変化の多くは過去数千年間に前例がないもので、大気や海は温暖化し、雪や氷河は減少し、海面水位は上昇しました。 この気温の上昇傾向は21世紀中も続くとみられ、最悪のシナリオをたどると、地球の気温は2.6~4.8℃も上昇すると予想されており、それが現実になった場合に人類の暮らしに与える影響は計り知れません。
複雑なシステムにより形成される地球の気候
もし、地球上に酸素も水も二酸化炭素も何もなければ、平均気温はマイナス18℃になると言われています。 しかし、地球には、大気があり、海があり、雲があり、生物がおり、また大気中のチリやホコリがあり、これら様々な要素が複雑に絡み合って、今の気候システムが形成されています。 将来の気候変動を精度よく予測するためには、これらの複雑なシステムの理解を深めることが重要ですが、いまだに解明されていない要素が多く、将来の気温上昇の予測値にはばらつきがあります。
気温上昇の予測値がばらつく原因は、地球の気候形成に影響を及ぼしている大気・海洋・陸域の各構成要素が、気温上昇時にどのように振舞うのか科学的に解明されていないことが原因です。 特に、「大気中のチリやホコリなどの微粒子が地表へ届く日射量に与える影響」、そして「生物による二酸化炭素の吸収能力」に関する理解は大きく不足しています。
「しきさい」が目指すもの
「しきさい」は、将来の気温上昇量の正確な予測に必要ながらも、科学的な理解が不足している
・エアロゾル(大気中のチリやホコリなどの微粒子)が地表へ届く日射量に与える影響
・生物による二酸化炭素の吸収能力
をはじめとした、地球の気候形成に影響を及ぼしている様々な物理量を観測します。これらを長期的に観測して、科学的理解を深めることで、将来の気候変動予測精度を高めることを目的にしています。
「しきさい」の形状や搭載パーツについて

① 多波長光学放射計(SGLI)
近紫外から熱赤外域(380nm~12µm)においてマルチバンド観測を行う光学放射計です。SGLIは、可視・近赤外放射計部(SGLI-VNR)及び赤外走査放射計部(SGLI-IRS)の2つの放射計部から構成されます。
②太陽電池パドル
軌道上において太陽光を電気エネルギーに変換し、衛星に必要となる電力を供給します。
「しきさい」で使われている技術のここがスゴイ!
「しきさい」に搭載されている観測装置の「多波長光学放射計」(SGLI)は、環境観測技術衛星「みどりII」に搭載された観測装置の「グローバルイメージャ」(GLI)に続く多波長光学センサです。 SGLIは、地上からの光を、近紫外線から可視光線、赤外線まで19の領域(チャンネル/バンド)で1000km以上の観測幅という広い視野で世界中を分けて観測します。雲の下の地表を観測することはできませんが、高頻度で多チャンネルのイメージャとしては250mという世界最高級の空間分解能(※1)で19の領域(チャンネル/バンド)の中から目的に応じてチャンネルを選択することで、陸域から、大気、海洋、雪氷まで様々な対象を観測することができます。
SGLIは、可視・近赤外放射計部(SGLI-VNR)と赤外走査放射計部(SGLI-IRS)の2つの放射計により構成されています。
※1:空間分解能 画像の1ピクセルが地表面何メートルかを表す衛星のセンサの性能を表すもの
可視・近赤外放射計部(SGLI-VNR)
SGLI-VNRは走査幅1150kmで、可視から近赤外域までの13チャンネルを持ち、多チャンネルで観測を行います。 そのうちの2チャンネルは偏光観測で使用され、これまでは精度よく捉えることが難しかった陸上エアロゾルを観測し、エアロゾルによる日傘効果の見積り精度を向上させます。
赤外走査放射計部(SGLI-IRS)
SGLI-IRSは走査幅1400kmで短波長赤外から熱赤外の6チャンネルを持ち、多チャンネルで観測を行います。赤外線で観測するために、昼夜を問わず観測が可能で、打ち上げられてから24時間休まず観測を続けています。
活用事例
①スマート水産業での活用

雲の下の海は見えないものの、250mという世界最高級の分解能で海面水温や水の色を高精度で観測することができ、海の色の情報からは、濁りの指標である懸濁物質濃度や、植物プランクトン量の指標であるクロロフィルa濃度などの情報を得ることができます。
これらの情報や現場での観測情報を組み合わせて活用することで漁場探査、赤潮モニタリング、養殖、藻場観測、流れ藻など様々な場所で活用されています。
参考:Earth-graphy 水産業
「漁業・養殖業におけるスマート化の推進勉強会」でJAXA水産担当の桑原が講演しました
②黄砂の観測

黄砂や噴煙などのエアロゾルは「しきさい」の主要な観測ターゲットのひとつです。「しきさい」は波長が短い2つの波長帯、紫(VN02:413 nm)と近紫外(VN01: 380nm)の光を観測する機能を備えていますが、これらの波長を観測することで、エアロゾルや黄砂粒子をより明確に捉えることができます。
気象庁では黄砂・エアロゾルの解析予測に気象衛星ひまわりのデータを活用中であり、「しきさい」のデータも活用するため技術開発を実施中です。
参考:「しきさい」が捉えた日本海・日本列島を横断する黄砂
気候変動観測衛星「#しきさい」が観測した黄砂
③海域火山

(左)航空機による観測(観測日:2022年4月18日)©海上保安庁 火山海域火山データベースより
(中)「しきさい」による可視画像 (観測日:2022年4月27日)
(右)「しきさい」による紫外画像 (観測日:2022年4月27日)
「しきさい」の画像では広範囲に変色水が広がっており、色が淡い変色水まで見えていることが分かる
日本周辺には多くの海底火山や海底火山の噴火などでできた火山島(総称して「海域火山」という)があります。しかし海域火山は、山体がほぼ海の中にあるため観測機器を置くことが難しく、航空機や船舶からの観測もタイミングによって海域火山の活動を見のがす可能性もあります。
海域火山は、火山活動が活発な時に熱水が沸きでて、色のついた水が火山の周りに現れる場合があります。これを「変色水」といい、海域火山の活動状態の目安となります。「しきさい」は様々な波長を組み合わせることで、黄砂や霞、太陽光の反射(ギラつき)などを補正して海の水の色を推定しています。これにより、上空から肉眼で見るだけではわからないような淡い変色水、特に鉄を多く含む変色水を、紫外線の海色画像ではっきりととらえることができます。
「しきさい」の打ち上げまでは、火山活動の監視に用いるとは想定していませんでしたが、防災機関との連携を通じて有用性が認められ、火山活動速報システムを通して「しきさい」を活用してもらえるようになりました。
参考:沖縄本島に接近・漂着している軽石の衛星観測情報
火山活動速報システム
④火災検出

(左)可視画像、(右)赤外画像
「しきさい」は可視光だけでなく、赤外線も観測しているため、火災を見つけやすい特徴があります。(左)可視画像では煙に隠れて見えづらかった部分も、(右)短波長赤外域の光は煙を通過しやすいため、実際に燃焼している場所(煙の発生源:赤くなっている部分)が分かります。
林野火災は、二酸化炭素などの温室効果ガスだけでなく、地球を冷却する効果を持つこともあるエアロゾルも大量に放出します。これらの物質は気候に影響を与える一方で、林野火災自体の発生頻度や規模、継続期間もまた気候によって変化します。将来、林野火災がどの程度増加(もしくは減少)するのか、そして気候への影響はどのようなものなのか、それらを精度良く予測するために、「気候変動予測先端研究プログラム(SENTAN)※」では、地球規模の火災予測モデルの開発が進められています。「しきさい」の観測データは、こうした火災予測モデルの開発や、火災エアロゾルの光学特性および放射強制力の推定などに用いられ、気候変動科学の理解の一助を担っています。
火災は地震による災害時にも発生します。令和6年能登半島地震においては、「しきさい」を用いた火災検出が行われ、被災地での延焼状況などの調査に利用されています。
また、2025年度は大規模な火災が相次いでおり(総務省消防庁「林野火災に注意してください!)、防災機関へ衛星「しきさい」の火災検出データを提供し、目の届かない場所や夜間の延焼の確認に活用いただいています。
※:気候変動予測先端研究プログラム(SENTAN)
気候変動の影響を予測し、適応策や緩和策を科学的に支えることを目的とした文部科学省のプログラムです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)などで、化学的根拠を提供する際に利用されています。
参考:Earth-graphy 火災関連記事
気候変動予測先端研究プログラムと宇宙航空研究開発機構の連携推進について
宇宙からの災害状況把握
⑤農業

「しきさい」の観測データを活用すると「蒸発散量」(ET : Evapotranspiration)という水面や土壌から水が気化する「蒸発量」と植物の体内の水分が気孔から放出される「蒸散量」をあわせた値が分かります。この「蒸発散量」は(左)に示すように作物の生育や収量との間に強い関係があることが分かっています。
その為、「蒸発散量」の値は水需要量の算定や、作物の収量変動の予測、灌漑の効果測定等での利用が期待されています。 「しきさい」の観測した「蒸発散量」データは、農林水産省が公開している「農業気象情報衛星モニタリングシステム(JASMAI)」の「気象・植生マップ」でも公開されています。
長期観測

「しきさい」は2018年1月から観測を開始し、2026年1月時点で8年以上のデータを蓄積しています。上図のように2000年以降の25年間でLSTは約0.03℃/年、SSTは約0.02℃/年の割合で上昇してきましたが、SGLIが観測を開始した2018年以降だけ見るとLSTは0.07℃/年、SSTは0.03℃/年のようにより大きな上昇率を示しています。特に2023年と2024年はEl Ninoの発生による影響も相まって、LSTは1.5℃、SSTは0.6℃近い高偏差を示していたことがわかります。

2000年以降の25年間のLSTとSSTの上昇は空間的に均一ではなく、上図のように北半球高緯度や欧州や日本、太平洋中高緯度域などで特に大きな上昇を示している一方で、あまり大きな変化をしていない地域も見られます。これは大気や海洋の循環や陸域の植生変化(蒸発散の効果)などの地球システムの応答が関連していると考えられます。「しきさい」の近紫外から熱赤外までの多くの波長で長期間継続して観測することで、このような多様な地球システム変動の監視と理解、さらには予測や対策の評価等に貢献することが期待されています。
仕様
「しきさい」の仕様・打上げ
| 項目 | 仕様 |
| ミッション機器 | 多波長光学放射計(SGLI) ・可視・近赤外放射計部(VNR) 非偏光観測(11ch)、分解能250m、走査幅1150km 偏光・多方向観測(2ch)、分解能1km、走査幅1150km ・赤外走査放射計部(IRS) 短波長赤外観測(SWI: 4ch)、分解能250m/1km、走査幅1400km 熱赤外観測(TIR: 2ch)、分解能500m、走査幅1400km |
| サイズ | 4.6m(D)×16.5m(W)×2.5m(H) |
| 質量 | 約2t |
| 発生電力 | 4000W以上 |
| 設計寿命 | 5年 |
| 運用軌道 | 太陽同期準回帰軌道 高度約800km |
| 打上げ年月日 | 2017年12月23日 |
| 打上げロケット | H-IIAロケット37号機 |
関連情報
<「しきさい」データの入手先>
「しきさい」の観測データは様々な方法で入手することができます。
・JAXA Earth Dashboard
JAXAの地球観測によって観測され、公開されている主な観測データに一元的にアクセスできるサイトです。自分が見たい時間、場所を指定して比較したり、指定した地点の観測データをグラフ表示させたりすることもできます。地表面温度、植生指数、海面水温、クロロフィルa濃度、エアロゾル量では「しきさい」のデータが使われています。
・JASMES Image Analyzer
全球の気候変動に係る諸物理量(地表面温度、海面水温、クロロフィルa濃度など)をマップ表示し、自由に拡大・スクロールでき、時系列グラフも表示できるサイトです。 全球は5km分解能で、日本周辺は250m分解能で観測したデータを提供しています。
・G-Portal
JAXA地球観測衛星の共通データ提供サイトです。
Webブラウザ上での検索・ダウンロード、もしくはSFTPでのダウンロードが可能です。
使い方はサテナビチャンネルの「G-Portalガイド動画」を参考にしてください。
その他、水産利用など用途にあわせて加工されたデータは「しきさいポータル」でも公開しております。
インタビュー

前 GCOMプロジェクトマネージャ
杢野 正明
気候変動の状況とその要因となるものを長期間、グローバルに観測するミッション

前 GCOMプロジェクトマネージャ
中川 敬三
このプロジェクトは宇宙から地球表面の健康診断をしているようなもの
最新情報
- イベント 2026.01.28 (水)
- お知らせ 2025.12.23 (火)
- イベント 2025.12.09 (火)
- お知らせ 2025.10.23 (木)
- お知らせ 2025.04.30 (水)
地球を見守る人工衛星
陸地、海洋、大気の状態を観測するための地球観測衛星です。災害や気候変動に対応するために、宇宙から私たちの地球を見守っています。
暮らしを支える人工衛星
通信を行ったり、測位(自分の位置を知る)を行ったりするための人工衛星です。新しい技術開発をするための人工衛星も作っています。
衛星プロジェクト ストーリー
人工衛星への熱き想い!
人工衛星は機械ですが、人工衛星を研究開発して運用するために、JAXAの宇宙開発の現場ではプロジェクトチームとして多くの人が協力して働いています。ここでは衛星プロジェクトを支えるストーリーを紹介します。ミッション遂行に向けた熱い想い、大変な話、感動する話、面白エピソード、普段聞けない裏話などなど。
ってだれが運営しているの?
サテライトナビゲーター(サテナビ)は、暮らしを支える人工衛星の開発・運用をしているJAXA第一宇宙技術部門が運営しています。JAXA第一宇宙技術部門の詳細についてはこちらへ。
JAXA 第一宇宙技術部門について
