お知らせ
2025.11.27(木)
全球降水観測(GPM)計画主衛星と雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の同時観測データセットを
公開しました
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、全球降水観測(GPM)計画主衛星と、雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の同時観測データを集約した、雲や降水に関するデータセットの一般提供を2025年11月27日から開始しました。
EarthCARE-GPM同時観測データセット
| 提供データの期間 | 2024年8月~ |
| 提供データの内容 | GPM/DPR、GPM/GMI、EarthCARE/CPR、ECMWF環境場データなどが、 それぞれの元データの分解能等を維持したまま格納されています。 |
| 提供データの形式 | netCDF4形式 *GPM/DPRのレーダ反射強度とEarthCARE/CPRのレーダ反射強度及び ドップラ速度の鉛直分布、GPM/GMIの輝度温度データについては、 クイックルック用のpng画像も提供しています。 |
| 同時観測の抽出条件 | 2機の衛星の交差時間が+/-15分以内 |
| 入手方法 |
データセットのウェブページから、利用規約等をご確認の上、 ユーザ登録をお願いします。 登録後、データ入手に必要な情報をメールでお送りします。 |
| DOI | 10.57746/EO.01ka7xakvwj6pcthxkvgt0vr0y |
👉データの詳細はデータセットのウェブページにあるドキュメントをご確認ください。
日米共同ミッションである全球降水観測計画「GPM主衛星」は、JAXAが情報通信研究機構(NICT)と共同で開発した宇宙から世界の降水を観測する二周波降水レーダ(DPR)と、アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発したGPMマイクロ波放射計(GMI)を搭載しており、2014年2月に打ち上げられました。DPRは、Ku帯降水レーダ(KuPR)とKa帯降水レーダ(KaPR)から構成されており、宇宙から降水を三次元に観測できることが最大の特徴です。
日欧共同ミッションである雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)は、JAXAが情報通信研究機構(NICT)と共同で開発した宇宙から世界の雲を観測する雲プロファイリングレーダ(CPR)と、欧州宇宙機関(ESA)が開発したエアロゾルや雲・放射を観測する大気ライダ(ATLID)、多波長イメージャ(MSI)、広帯域放射収支計(BBR)を搭載しており、2024年5月に打ち上げられました。CPRは、世界初のドップラー機能を有したW帯雲レーダであり、宇宙から雲の鉛直分布や雲粒の上下方向の動きを観測できることが最大の特徴です。

GPM主衛星とEarthCARE衛星はどちらも高度400~450kmを飛ぶ低軌道衛星ですが、GPM主衛星は太陽非同期軌道、EarthCARE衛星は太陽同期準回帰軌道という異なる軌道を飛んでいます。この軌道の違いにより、両衛星の軌道が同じタイミングで交わった際、このような複合観測データが利用可能となります。JAXAはカルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)Joint Institute for Regional Earth System Science and Engineering (JIFRESSE) F. Joseph Turk博士との共同研究で本データセットを開発してきました。
👉軌道について詳しく知りたい方は:
”地球を見守る人工衛星たち”―人工衛星たちの位置をリアルタイムで表示しています。
開発したEarthCARE-GPM同時観測データセットから、2025年10月19日7:30(UTC)頃のアメリカ南部でのEarthCARE衛星とGPM主衛星の同時観測事例をご紹介します(図2)。図2(a)から、GPM/DPRで降水が捉えられている領域(カラー)がわかり、赤線で示す通りEarthCARE/CPRが144秒差で同じ雨雲を観測しました。図2(b)はDPRによる降水タイプを示しており、対流性・層状性などの様々なタイプの雨を含む降水システムであることがわかります。

(a)はGPM/DPRによる地表降水量の分布、(b)はGPM/DPRによる降水タイプ分類を示しており、
それぞれ赤線がEarthCARE/CPRの観測軌道。
図3には、図2の赤線に沿った鉛直断面の観測結果を示します。図3(a)のEarthCARE/CPRによるレーダ反射強度は、値が大きい(赤い)領域は、雲や雨の粒が大きい、もしくは、数多く存在していることを示しています。図3(b)のEarthCARE/CPRによるドップラー速度は、雲粒や雨滴の上下方向の動きをドップラー効果に基づき計測した速度です。図2の水平分布で、対流性の降水が観測されている緯度32.8度周辺の黒丸で囲んだ強雨域では、雲が高くまで発達し、ドップラー速度の値が大きく(黄~赤)、雲粒が大きく上昇している様子がわかります。これに対応するGPM/DPRの観測として、図3(c)のKaPR、図3(d)のKuPRそれぞれのレーダ反射強度をみてみると、10kmの高さまで降水粒子が存在していることが確認できます。特に図3(d)のKuPRは、CPRやKaPRでは捉えられない地表付近の強い降水を観測できる特徴があり、鉛直断面図からもその結果が確認できます。
緯度33.5~35度周辺の層状性の降水が降っている領域では、点線で示される気温が0度の高度付近を境に、図3(b)のCPRのドップラー速度が全体的にマイナスの値(青く)となっており、粒子が落下している、つまり雨雲の下層で雨が降っていることを示しています。これに対応するように、図3(c)(d)でも、DPRによって降水が観測できます。また、緯度32度以南をみると、図2ではDPRでは地上の降水は観測されていませんが、その上空には、図3(a)で分かる通り、薄い雲が広がっている様子がみてとれます。

(a)EarthCARE/CPR レーダ反射強度、(b)EarthCARE/CPR ドップラ速度、
(c)GPM/KaPR レーダ反射強度、(d)はGPM/KuPR レーダ反射強度。
点線は気温0度の高度を示す。
このように、2025年11月27日より公開した「EarthCARE-GPM同時観測データセット」では、EarthCARE衛星とGPM主衛星が同時間帯(時間差が±15分以内)に観測した日時のデータを集約しており、これら2つの衛星のシナジーにより、雲・降水にかかわる様々な情報を複合的に解析するために有効です。最近研究では、CPRとDPRを組み合わせた、雨域内の上下方向の風の推定手法の開発に世界で初めて成功し、層状性降水と対流性降水の上下方向の風に関する特性の違いを定量的に確認できています(*1)。このような研究開発により、雨域内の雲と風の動きに関する気象・気候モデルの評価や改良に期待できます。
*1: 本研究はAtmospheric Measurement Techniques(AMT)誌にて論文投稿済(Aoki et al. 2025)。プレプリントは2025年8月公開済(https://doi.org/10.5194/egusphere-2025-3596)。
さらに、GPM主衛星に搭載されているGPMマイクロ波放射計(GMI)のデータや、EarthCARE/CPRの雲に関わるプロダクト、環境場データも格納しています。また本データセットを可視化するホームページも現在、開発中です。後日、可視化ホームページの運用が始まりましたらアナウンスいたしますので、どうぞご期待ください。EarthCARE-GPM同時観測データセットの活用により、雲・降水の包括的な理解につながる科学研究がより一層進むことを期待しています。
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