お知らせ
2026.10.01(木)
ラムサール条約事務局とJAXA、世界の湿地保全に向けた連携を強化
ラムサール条約事務局と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2026年9月28日、湿地の保全強化に向け、JAXAが有する地球観測衛星データへのアクセスと利用を拡大するため、新たな了解覚書を締結しました。本日締結された了解覚書に基づき、JAXAは、雲や森林に覆われたエリアや夜間でも湿地を観測できるレーダー画像を含む地球観測データを、ラムサール条約の172の締約国に提供します。これにより、各締約国は湿地の変化を継続的に把握し、その消失を未然に防ぐための取組に活用することができます。

左からJAXA第一宇宙技術部門 仁尾友美地球観測統括、ラムサール条約事務局 ムソンダ・ムンバ事務局長
ラムサール条約事務局のムソンダ・ムンバ事務局長は、次のように述べています。
「湿地は、地球上のどの生態系よりも速いペースで失われていることが分かっています。しかし、これまで我々は、十分な情報がない中でその消失への対応を迫られてきました。今回の協力により、地球観測衛星という『宇宙からの目』で、世界にとって失うことのできない湿地を見守ることが可能になります。地球観測は、湿地の保全と再生を支える上で不可欠なデータを提供してくれます。」
本了解覚書は、ラムサール条約の第5次戦略計画およびJAXAの第5期中長期計画(2025~2031年度)の枠組みのもとで締結されました。これに基づき、ラムサール条約事務局は、JAXAが全球を対象として毎年作成しているLバンドSAR全球モザイクおよびALOS-2 ScanSARデータにアクセスできるようになります。これらの衛星レーダーは、雲や森林に覆われた地域でも観測が可能で、全球・国・地域レベルで湿地の範囲やその変化を把握することができます。また、JAXAが進める湿地湛水域マッピング(Wetlands Inundation Mapping)イニシアティブのデータやGlobal Mangrove Watchのデータも対象となります。さらに、2026年9月末には、南米および中央アフリカの熱帯湿地を対象とした新たな湛水域マップの公開が予定されています。
一方、ラムサール条約は、2,500か所を超える国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)の情報が登録された「ラムサール条約湿地情報サービス(RSIS: Ramsar Sites Information Service)」の現地データをJAXAと共有します。また、両者は、湿地保全への地球観測の活用を推進する国際的なパートナーシップ「GEO-Wetlands」や、ラムサール条約の科学技術検討委員会(STRP)を通じても連携していきます。
JAXAは、各締約国による国別湿地目録(National Wetland Inventories)の作成・更新に必要な能力の向上に向けたラムサール条約の支援の仕組みに協力します。これにより、各国は、自国が有する自然資本の状況をより明確かつ確実に把握できるようになります。また、昆明・モントリオール生物多様性枠組、パリ協定、持続可能な開発目標(SDGs)などの国際的な枠組みに対しても、より適切な報告を行うことが可能になります。
JAXAの瀧口太理事は、次のように述べています。
「私自身、2008年のG8北海道洞爺湖サミットや2010年の最初の協力協定の締結に深く関わってきたこともあり、この度、ラムサール条約事務局との間で新たな了解覚書を締結できたことを大変嬉しく思います。JAXAは、世界で唯一、30年以上にわたり蓄積してきたLバンドSARデータと地球観測の知見を活かし、湿地や森林等の長期的な変化の把握と科学的根拠に基づく政策決定を支援してきました。本協力が、ラムサール条約締約国における地球観測データの活用をさらに促進し、世界の湿地保全の強化につながることを期待しています。」
また、署名式に参加したJAXA第一宇宙技術部門 仁尾友美地球観測統括は、推進する重点テーマの一つである「自然資本の把握とクレジット創出」の観点からも今回の連携の重要性を強調し、「湿地は生物多様性の保全や気候変動対策、水資源の維持など、多様な価値を持つ重要な自然資本です。JAXAが長年培ってきた地球観測技術を活用し、ラムサール条約事務局との協力をさらに深めることで、自然資本の状況把握や保全に一層貢献してまいります。」と述べました。
JAXAでは第5期中長期計画において、「自然資本の把握とクレジット創出」を重点テーマとして掲げています。今回の了解覚書締結は、自然資本分野における国際協力をさらに発展させる重要な一歩となります。
今回の連携は、ラムサール条約自身の科学的評価で指摘されている課題に応えるものです。「Global Wetland Outlook 2025」によると、1970年以降、世界の湿地の22%が消失しており、その面積はサッカー場5億面分以上に相当します。さらに、現存する湿地の最大5分の1が2050年までに消失するおそれがあり、それによって人々、経済、自然にもたらされる最大39兆米ドル相当の便益が失われる可能性があります。また、現在残っている湿地の4分の1は、すでに生態学的に劣化した状況にあります。
こうした湿地の減少の多くは、少ない費用で回復できる段階を過ぎてから、ようやく把握されています。湿地の再生には1ヘクタール当たり最大7万米ドルを要する場合がある一方、早期に対策を講じれば、わずかな費用で再生できます。地球観測データは、継続的に更新され、地上調査では実現できない規模で状況を把握できるため、政府が湿地の劣化を早期に把握し、比較的少ない費用で回復できる段階で対策を講じることができます。これは、「Global Wetland Outlook 2025」が湿地減少の流れを転換するために示した4つの道筋の一つです。
ラムサール条約は、世界で最も歴史のある多国間環境協定です。湿地の保全・再生を推進し、人と自然のために湿地の賢明な利用を確保するための国際協力の枠組みを提供しています。172の締約国が参加する本条約は、生物多様性、気候の安定、水の安全保障、人々の幸福にとって不可欠な生態系である湿地を各国が保全する取組を支援しています。また、世界で2,500か所を超える「国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)」のネットワークを管理しており、その総面積は2億6,000万ヘクタールを超えています。 詳細は、ラムサール条約ウェブサイトをご覧ください。
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