お知らせ

2025.12.23(火)

地球の色を読み解く「しきさい」

美しい地球の姿を届けてくれる

『JAXA地球観測データ利用30年』特集の第9弾は、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)についてご紹介します。 「しきさい」は地球環境の変化を高精度で観測する衛星で、特に大気中のエアロゾルや海洋の色、植生の変化などを詳細にモニタリングすることで、地球の気候変動や環境問題の理解に貢献しています。

図1:Instagramで一番「いいね」を頂いた「しきさい」が観測した北海道 (観測日:2019年10月18日)

「しきさい」の観測画像はとても美しく、地球環境変動観測ミッション(Global Change Observation Mission)という同じミッションを持つ、兄弟衛星でもある水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)と共にInstagram(@gcom_jaxa)にて画像を公開しています。図1の秋の北海道の画像は2025年11月現在、一番多くの「いいね」を頂いた画像です。この他にも世界中の美しい観測画像が紹介されていますので、ぜひフォローしてお楽しみください。

19もの目で様々なことを伝えてくれる

「しきさい」は美しい画像だけでなく、近紫外線から可視光線、赤外線までの19もの目(チャンネル/バンド)で、広い視野で世界中を観測しています。雲の下の地表を観測することはできませんが、多チャンネルのイメージャとしては250mという世界最高級の空間分解能(※1)で海面水温や水の色を高精度で観測することができます。例えば、観測した海の色の情報から、濁りの指標である懸濁物質濃度や、植物プランクトン量の指標であるクロロフィルa濃度などの情報を得ることができ、これらは漁業や養殖業に役立てられています。

参考:Earth-graphy 水産業

図2:「しきさい」の観測画像(観測日:2021年10月26日)
白く見えるのは雲で、矢印部分の雲の下に水色の筋状に見えるものが軽石の分布と考えられる

参考:沖縄本島に接近・漂着している軽石の衛星観測情報

図3:カナダの森林火災の様子(観測日:2025年5月27日)(右上)広範囲な煙を捉えると共に、
(右下)赤外線観測により、燃えている場所(赤点、高温)も分かる

「しきさい」が活躍するのは海上だけではありません。陸上でも活躍しています。「しきさい」は林野火災の様子も複数の波長帯で詳細に観測することができ、大規模火災の際などは要請に応じて衛星データを提供しています。また、火災によってエアロゾルが発生し、気候に与える影響も懸念されておりますが、どのような影響を与えるのかという研究にも「しきさい」の観測データは役立てられています。

参考:「しきさい」が捉えたシベリアの森林火災
しきさい衛星による大規模林野火災に伴うエアロゾルの気候影響推定(論文解説)

グローバル光学放射計の歴史

図4: (上)「みどり」のOCTSにて観測された1997年5月の平均海面水温分布
(下)「しきさい」のSGLIにて観測された2025年5月の平均海面水温分布

美しいだけでなく、有用な情報を届けてくれるSGLI(※2)はグローバル光学放射計という系譜のセンサです。この系譜のセンサもJAXAの地球観測データの利用が始まった1995年には既に運用されており、海洋観測衛星「もも1号」(MOS-1) と「もも1号b」(MOS-1b)の可視熱赤外放射計(VTIR)、地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」(ADEOS)の海色海温走査放射計(OCTS)、環境観測技術衛星「みどりII」(ADEOS-II)のグローバル・イメージャー(GLI)に搭載されており、「しきさい」のSGLIにはこれまでの衛星の技術が受け継がれています。

図4は「みどり」と「しきさい」の観測画像です。(上)「みどり」の観測では太平洋上など観測できなった欠損部分(黒い部分)が多かったですが、「しきさい」では空間分解能(※1)が約3倍となったことで欠損も減り、陸地部分の川や湖も観測出来ていることが分かり、センサの進化を見ることができます。

図5:(左)「みどり」の画像パンフレット(1998年頃)、
(右)パンフレット画像の一つ(1997年4月25日の日本周辺の海面水温分布)

また、観測データの提供方法も1990年代までは図5(左)のようなアナログ印刷で、解説文と共に関係者に提供していましたが、インターネットの普及により特定の画像をウェブで公開する形に変化しました。そして、現在ではJAXA Earth Dashboardなどで利用者が選択した日付のデータを取得できるようになりました。

この度『JAXA地球観測データ利用30年』を記念してまとめられた、「JAXA地球観測衛星の歴史」にJAXAの地球観測衛星の家系図ともいえる年表が記載されています。また、「衛星センサ技術の系譜」には衛星に搭載されているセンサがどのように進化していったかがまとめられています。他にも、「衛星データ利用の拡大」「解析技術・データ提供の発展」にはこれら得られた情報がどのように利用されてきたかがまとめられています。『JAXA地球観測データ利用30年』特設サイトの「これまでの歩み」に掲載しておりますので、是非ご覧ください。

長期的な観測によって得られる情報

図6:MODISとSGLIの観測データを複合して作成した海洋域のクロロフィルa濃度CHL(常用対数スケール)と陸域の植生指数NDVI(色を合わせるためにスケールを4倍している)との2000年~2025年における1年あたりの変化率の全球分布。暖色が増加、寒色が減少を示す。

「しきさい」は現在設計寿命の5年を超え、2025年12月23日で8年を迎えました。この8年で蓄積された衛星データと海外の同種のデータも複合して解析することで1台のセンサではカバーできない数十年の変動を監視することができます。

例えば、図6はSGLIに加えて1999年から運用されている米国の光学放射計MODISによる植生指数(NDVI:植生の活性度を示す指数)とクロロフィルa濃度(CHLA:水中の植物プランクトン量を示す指標)の約25年間の変化率の分布を示したものです。農地の拡大や緑化が行われているといわれているインドや東アジアや積雪時期が短くなっている高緯度域などで植生指数が増加している様子がわかります。一方、海洋では表層の水温の上昇で下層からの栄養塩の供給が減少しているからか高緯度域以外ではクロロフィルa濃度が減少している海域が多く見られます。

このような長期の環境データは、進行しつつある全球規模の気候変動に対して地球環境がどう変わっていくのか、さらには人間生活にもかかわる自然資源や農業生産や生活環境にどう影響していくのかなど、今後の環境対策の指針になる重要なデータとなります。「しきさい」の活躍もますます期待されます。

※1:空間分解能 画像の1ピクセルが地表面何メートルかを表す衛星のセンサの性能を表すもの
※2:SGLI「しきさい」に搭載されている多波長光学放射計(SGLI:Second-generation GLobal Imager

<関連サイト>
しきさいポータル ~地球の彩りを宇宙から~
JAXA Earth Dashboard
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