イベント

2023.01.13(金)

Space Apps Challenge 2022の開催結果について

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、米国航空宇宙局(NASA)と協力し、地球観測衛星データの活用や探査等に関するバーチャルハッカソン(※1)「Space Apps Challenge 2022(2022年10月1日、2日開催)」の優勝10チームを選定いたしました。

「Space Apps Challenge 2022」の参加チーム数は世界162の国と地域から5,300以上にのぼり、JAXA、NASA、ESAをはじめとする本イベントの主催宇宙機関が提供する様々な地球観測データ等を利用して、災害や気候変動、将来的な有人宇宙探査等の課題に対する創造的な解決策の開発検討がなされました。最終的には22件の課題に対し、3,094件の解決策(プロジェクト)が提出され、第一次審査でファイナリスト35チームを選出、最終審査を経て優勝10チームを選定いたしました。

JAXAは、今回のハッカソンへの協力として、昨年度同様、「JAXA地球観測衛星データの情報を提供」、「提出されたプロジェクトの審査」などを実施し、JAXAの地球観測衛星データを世界に広く知ってもらう機会となりました。今後もJAXA衛星のデータ利活用が拡大し、世界規模の社会課題の解決に貢献することを期待いたします。 

1.  バーチャルハッカソン「Space Apps Challenge 2022」の開催実績

●主催:NASA、JAXA、 ESA(欧州宇宙機関)、 ASA(オーストラリア宇宙局)、AEB(ブラジル宇宙機関)、 CSA(カナダ宇宙庁)、 CONAE(アルゼンチン宇宙活動委員会)、NSSA(バーレーン国家宇宙科学機関)、AEP(パラグアイ宇宙機構)、SANSA(南アフリカ国立宇宙機関)、AEM(メキシコ宇宙機関)、ISRO(インド宇宙研究機関)

●開催日:2022年10月1日(土)~2日(日)

●参加者:31,561人(162の国と地域)

●提出されたプロジェクト数:3,094件

2.優勝10チームのプロジェクト概要

賞/チーム名 プロジェクト概要
Best Use of Science
(科学的手法や科学を有効活用している賞)
What’s new?
本プロジェクトでは、太陽嵐の発生率を予測するための機械学習パイプラインが提案されており、このチームは問題を(1)DSCOVRの磁気データをWindの磁気データにマップする、(2)磁気データを太陽のプロトンデータに変換する、(3)プロトンデータに基づいて嵐の発生確率を予測する、という三つのサブ問題に分割している。それぞれの変換には、シーケンスの特徴を捉えるための時系列モデルが使用され、プロセスをサブ問題に分割することで、それぞれのサブ問題はより代表的になり、下流のタスクで利用することができるようになる。結果としてパイプラインの適用性を示し、太陽嵐を予測することに成功した。
Best Use of Data
(データアクセスをし易く、またはユニークなデータ活用をしている賞)
Starflock
このプロジェクトのミッションは、火災から発生する煙の成分を評価し、その化学的性質に違いがあるかどうかを見極めることである。より正確に山火事を予測するため、特に山火事と焼畑との違いに着目している。エアロゾルの化学的性質を理解することで、手遅れになる前に山火事やその社会的被害を正確に予測し、拡大を防ぐことが期待される。現地の収穫物への影響を把握し、何百万もの農作物の被害を防ぐことを期待している。
Art and Technology(技術力と想像力を最も効果的に融合させた賞)
Earth, Wind & Flare
このプロジェクトは、宇宙天気とその地球への影響をインタラクティブかつ芸術的な方法で宣伝するIoT(Internet of Things)デバイスが作られている。このデバイスの主な要素は、(1)地球の天気と同様に宇宙天気(太陽風速や地磁気擾乱など)を表示するLEDマトリックスボード、(2)様々な国際的データソース(NASA、NOAA、日本の柿岡磁気観測所、ドイツ地球科学研究センターなど)、(3)データ表示で視覚、聴覚効果を得る事、例えば地磁気擾乱データを音楽要素にマッピングして「太陽風の音楽」を作り出すこと、などでである。このプロジェクトの最終的な目標は、宇宙天気に対する一般の人々の認知を高めることである。
Best Use of Technology
(最も革新的な技術の活用例を示している賞)
tTAMing particles
火星に不時着した後、1年間のミッションを生き抜くために、まず何に取り組むべきか、選択肢は圧倒的に多い。地球上では何度も事前にリハーサルしていることだが、このような状況では物づくり的なアプローチをとることが賢明である。本チームは、火星での居住に必要とされる組立品やシステムの構成要素である、交換可能な部品の構造を開発した。廃棄物処理システム、クルーの士気、着陸時に紛失したツール、ローバーの交換用ホイールなど、火星での居住に最も重要な分野を考慮し、希少な材料を節約しながら、同じパーツでさまざまな物づくりが実現できることを示した。
Galactic Impact
(地球上や宇宙での生活を向上させる可能性が最も高い賞)
Selene
アポロ計画は1968年から72年にかけて実施されたが、これまで、そこで得られた月震(月に起こる地震)データは3D環境で可視化されたことがなかった。本チームは、ユーザーが入力した日付に基づいて、3D月球儀上に地震波のアニメーションを描画するインタラクティブなウェブアプリを開発した。ユーザーが年月日を入力すると、任意の緯度・経度上に月震波の変化の様子を示したアニメーションとその詳細が表示される。
Best Mission Concept
(成立しうるコンセプト、デザインの賞)
MARS 3D HOME
本チームの課題に対する最大の目標は、火星の居住施設を整備するため、ローバーのホイールや宇宙飛行士が休むためのベッド設計など、さまざまなタスクに応用可能な部品を、3Dプリンターで作成することである。火星の環境を分析して利用可能な資源を検出し、4人の宇宙飛行士が火星で1年間生存できるように基本的な要求事項を示した。インダストリアル・デザイン、電子工学、3Dプリント技術などのバックグラウンドを持つ5人でチームを組み、3D部品を作るために使用する材料について調べた。NASAから提供されたリソースも用いて、火星で快適に暮らすための居住空間と多機能ツール及びガジェットをデザインすることができた。
Most Inspirational
(解決策が最も心に響いた賞)
Team Diamonds
Diamond In The Skyは、10〜12歳の子供たちを主な対象に開発された、インタラクティブなゲーム形式の宇宙学習教材である。このゲームでは、星や夜空がどのように変化していくかを学ぶことができ、子どもたちはゲームで遊びながら、星の位置や色、明るさについて知識を得られる。また、子どもたちに星の瞬きや夜空のゆっくりとした変化だけでなく、なぜそれが起こるのかを理解してもらうこともこのゲームの目的である。子どもたちに新たな発見を与えられるゲームであることに自信を持っている。
Best Storytelling
(物語を引用する手法を通じて、オープンデータの可能性を最もエイティブに伝えている賞)
MIMBI
本チーム「MIMBI」(グアラニ語で「火花」)は、文学、映像・画像、音楽、パブリックアートを通して、パラグアイ初の人工衛星を自身のコミュニティに紹介し、すべての年齢層が楽しめるユニークなインタラクティブ・ストーリーテリングへの挑戦を試みた。AIが作成した人工衛星に関するアートと、織物、詩、音楽、絵画スタイルなどパラグアイの文化を取り入れたカスタムメイドの物語を再生することができるウェブアプリにつながるQRコードを載せたチラシを地元の企業や商店に設置した。設置後、最初の4時間で、300人以上の人がサイトを訪れる結果となった。この手法を応用して、シャーガス病(アメリカトリパノソーマ症)から多くの人々を救ったパラグアイの科学的なマイルストーンについて広く知ってもらいたいと考えている。
Global Connection
(技術で世界中の人々を繋いだ賞)
Standard NCTU CS Student
本チームは、国際宇宙ステーション(ISS)を追跡するためのWebアプリケーションをオープンソースで提供した。このアプリケーションは、ISSや地球などを3Dで表示し、ユーザーが観測したい時刻を指定することで、任意の時間帯のISSを容易に追跡することができる。また、ISSの「自転しながら公転する」「常に太陽の方向を向いている」という特徴も踏まえた正確な姿勢を示すことも可能である。地球には、すべての地上通信局を表示し、その時にあるISSの位置からリンク可能な局は丸で囲んで示している。宇宙空間には、すべてのスペースデブリを表示し、最も近いデブリを明るく光る球体で示している。ユーザーはこの軽量なWebアプリケーションで、ISSの謎を心ゆくまで探索することができる。
Local Impact
(ローカルな影響の可能性を最大限に発揮している賞)
Brute Force
メソポタミア時代の天体観測から、宇宙の果てまで見渡せる今日の望遠鏡まで、人類は常に未知の世界に好奇心を持って挑んできた。月震情報は、宇宙の謎を解く重要な手がかりになる。本チームのプロジェクトは、まさにその一端となることを目指している。私たちに最も近い天体である月の内部パルスに注目することで、その内部構造を理解することを目指している。アポロのPSE(Passive Seismic Experiment)地震計のデータを解析し、月震現象のプロットを行った。可視化のためには、月のモデルを作成し、その上にPSE局のデータを表示してそれぞれの地震計データをプロットし、小規模な月震をそのマグニチュードに応じて波紋としてマッピングできるようにした。

※優勝10チームの情報: https://2022.spaceappschallenge.org/awards/
※ファイナリスト35チームの情報: https://2022.spaceappschallenge.org/awards/global-finalists/


3.本ハッカソンの最終審査にあたってJAXA審査委員からのコメント

JAXA 中村全宏(バンコク駐在員事務所、所長)
地球観測データの応用利用だけでなく、地球科学や宇宙教育といった側面から、また、研究者や学生だけでなく、幅広く一般を対象とするものまで、自由で革新的な技術的・社会的な発想の提案にあふれており、明るく豊かな未来を想像できるものでした。宇宙とデジタルが出会い、個人一人ひとりにアプリケーションがサービスされる。これらのアイデアが実現するような明日の社会を目指して、皆で取り組んでいきましょう。

※1:ハッカソンとはエンジニアなどがチームを作り、共通の課題に対してアプリケーションやサービス開発し成果を競う開発イベントです。

最新情報を受け取ろう

公式ソーシャルアカウント