お知らせ

2026.02.17(火)

JAXAの衛星観測による防災の取り組みが紹介されました

2026年1月3日、NHK WORLD JAPANの”BOSAI – Science that Can Save Your Life –“ 『防災 -命を守る科学-』にてJAXAの衛星による防災の取り組みが放送されました。

この番組のタイトルにもなっている”BOSAI”は日本語の「防災」がそのままローマ字表記で使われている言葉で、日本の包括的な防災概念(事前対策から復興まで)を指す言葉として使われ始めています。この番組では、自然災害の多い日本が科学の力で災害に向き合う様子が紹介されています。

今回、”Disaster Preparedness from Space” 『宇宙からの災害対策』と題して、たくさんの映像とJAXA第一宇宙技術部門 衛星利用運用センターの寺内 耀さんのインタビューを通してJAXAの衛星観測による防災の取り組みを紹介いただきました。放送内容はNHK WORLD JAPAN のサイトにて2027年1月2日まで視聴可能です。

図1:筑波宇宙センターのスペースドームに展示されている「だいち2号」
”Disaster Preparedness from Space” 『宇宙からの災害対策』(nhk.or.jpより)

放送では2014年に打ち上げられ、防災分野で様々な貢献をしている陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の活躍が紹介されました。

浸水域が分かる

図2:愛知県豊川市付近
(左)発災前の様子(観測日:2023年2月10日)、(右)発災後の様子(観測日:2023年6月2日)

2023年(令和5年)の台風2号は梅雨前線が本州付近に停滞し、前線に向かって台風周辺の非常に温かく湿った空気が流れこんだため、前線の活動が活発になり、西日本から東日本の太平洋側を中心に大雨となりました。高知県、和歌山県、奈良県、三重県、愛知県、静岡県では線状降水帯が発生し、各地に被害を及ぼしました。

JAXAは国土交通省より2023年6月2日18:00に豊川市付近の緊急観測要請を受けて調整を開始し、「だいち2号」が日本上空を通過する23:44に該当エリアの緊急観測を実施。同時に推定浸水域の自動解析も開始し、約3時間後の6月3日2:40に観測したデータおよび自動解析した結果(図3)を国土交通省に提供しました。国土交通省は観測データと解析結果を元に、速やかな浸水解消のため、被害が想定される地域のどこに排水ポンプを配置するかといった計画を夜間のうちに立てることができました。

図2はその際に観測された愛知県の豊川市付近の様子です。黒く暗く写っている部分は水に覆われていると推定される箇所です。(左)の発災前と(右)の発災後を比較すると、暗く写っている部分が多い、豊川市と豊橋市の広い範囲で浸水の可能性があることが分かります。

「だいち2号」に搭載されている合成開口レーダ(SAR)は衛星のアンテナから電波を送り、返ってきた情報から地球表面の様子を把握します。そのため、太陽光を必要とせず夜間でも観測することができ、使用している電波は雲を通り抜けることが出来るので、雨雲に覆われていても地表面の様子を捉えることができます。

図3:「だいち2号」で観測したデータを自動解析した浸水被害推定域

図3は「だいち2号」の観測時間(2023/6/2 23:44)における推定浸水域の解析結果です。図2に示すような観測データだけでは、観測データを見慣れているJAXA職員でも短時間で浸水域を特定することは難しいため、観測データとシミュレーションデータ、土地被覆、地形、ハザードマップデータと組み合わせることにより短時間かつ自動で処理解析します。結果は災害対応時でも簡単に閲覧・共有ができるようWebGIS(HTML形式)を含む複数の形式で提供し、衛星の観測データの予備知識がない方でも利用しやすいように工夫しています。

なお、JAXAが研究開発を進めている人工衛星を用いた洪水などによる浸水被害域の自動抽出情報の解析手法については、「だいちシリーズによる浸水被害推定の自動解析手法」で詳しくご紹介しています。

参考:宇宙からの災害監視 陸域観測技術衛星2号「だいち2号」災害事例集2014~2023
JAXAと国土交通省道路局が災害発生時の人工衛星画像データの活用に関する協定を締結
―道路の被害状況把握にJAXAの衛星画像データを活用―

地震で変化した地表の様子が分かる

「だいち2号」が観測したデータは水害だけでなく、地震が発生した際にも活用されています。
令和6年能登半島地震では2024年(令和6年)1月1日16:10に石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、甚大な被害をもたらしました。日没直前に地震が発生したため、情報の収集が難しく、特に山間部では状況の把握が極めて困難でした。

図4:RGBカラー合成画像、広い範囲で陸域化した箇所がみられ、海岸線が大きく変化したことが推定された

地震発生約30分後の16:44にJAXAは国内防災機関から「だいち2号」の緊急観測要請を受け、当日夜の観測に向けた準備を開始しました。「だいち2号」が日本上空を通過する23:10に該当エリアの緊急観測を実施し、準備ができた観測データから順次配信しました。

その際、配信した画像データの中に「RGBカラー合成画像」があります。これは災害前の画像に赤色(R)、災害前の画像に緑色(G)、青色(B)を色付け、重ね合わせることによって、災害によって変化があったと推定される箇所を赤色や青色で表示した画像です。能登半島地震では沿岸部に広い範囲で青色の箇所が見られ、広い範囲が陸域化し、海岸線が大きく変化したことが推定されました。その他、土砂崩れが発生した可能性がある箇所も発見され、ヘリコプターによる調査などに活用されました。

このように、衛星では広範囲を観測することができ、全体把握に役立つため、発災後により詳細な状況把握のために、どこに調査の手を伸ばすべきなのか判断する材料として非常に強力なツールとなっています。

参考:宇宙からの災害状況把握 ~令和6年能登半島地震におけるJAXAの対応について~

今後の活躍への期待

2024年7月に「だいち2号」の後継機として、観測幅が50kmから200kmへと4倍に進化した先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)が打ち上げられ、2025年4月からは定常観測運用を開始し、観測データの提供も開始しています。

これからもJAXAは、衛星を活用した防災の取り組みを積み重ね、安心できる社会づくりを支援していきます。

参考:【くまモンといっしょ!】熊本県×JAXAが熊本地震の恩返し!人工衛星で防災連携!
JAXAと国土交通省道路局が災害発生時の人工衛星画像データの活用に関する協定を締結
―道路の被害状況把握にJAXAの衛星画像データを活用―

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