お知らせ

2025.08.19(火)

グリーン及びカーボンクレジットに係るカンボジア環境大臣との会談及び日カンボジア経済共創イベントの実施について

2025年7月、カンボジアのプノンペンにて、ジェトロ及びJAXA共催、カンボジア商工会議所、カンボジア若手起業家協会協力のもと、「日カンボジア経済共創交流シンポジウム(第3回)~日本発のデジタル・グリーン・宇宙技術を活用したイノベーションとエコシステムの創造に向けて~」を開催しました。
また本イベントに合わせて、JAXAではカンボジア環境省のイアン・ソパレット大臣と個別会談を行い、JAXAからは衛星地球観測の取り組みを紹介し、大臣からはカンボジアの気候変動対策に向けた取り組みについて紹介いただき意見交換を行いました。

■会談(7月23日)

JAXAとカンボジア環境省は、気候変動対策や、森林をはじめ自然資源の管理を目的として、衛星地球観測分野での協力を進めています。

JAXAからは第一宇宙技術部門 落合 治地球観測研究センター長及び、祖父江 真一地球観測統括付シニアアドバイザーより、現在協力中のカンボジア全土の森林バイオマスマッピングのほか、JAXAが作成したカンボジア全土の高解像度土地利用土地被覆図(HRLULC)、そして衛星データによる稲作への応用(水田面積の推定と収量見通し把握、カーボンクレジット経済への貢献を目指す稲作地からのメタンガス排出量推定)といった取り組みについて説明しました。

これに対し、ソパレット環境大臣からは、日本の先進的な衛星技術による気候変動対策への取組に関し、賞賛の辞が述べられると共に、カンボジアが森林減少と再植林計画のための炭素固定量の評価を行い、2050年までのカーボンニュートラルを目指していることが紹介され、その実現のためには、日本とのパートナーシップが不可欠であるとの認識が強調されました。

(右)ソパレット環境大臣、(中央)落合センター長、(左)祖父江シニアアドバイザー

日カンボジア経済共創交流シンポジウム(第三弾)(7月24日)

本シンポジウムは、一昨年、昨年に引き続き、日本とカンボジアのグリーン分野の経済共創を促進するために日本貿易振興機構(ジェトロ)とJAXAの共催のもと開催されました。カーボンニュートラルの実現や、持続可能な開発目標(SDGs)の達成といった社会課題の持続的な解決を目指す日系企業7社も参加し、両国の官民の関係者の間で活発なネットワーキングが行われました。 (参加した日系企業:Green Carbon(株)、サグリ(株)、(株)フェイガー、日本工営(株)、(株)Archeda、(株)SpaceBlast、GOMIソリューションズ(株))

冒頭、ジェトロの前川理事から開会挨拶として、昨年のシンポジウムの機会にフン・マネット首相と面談した際、日カンボジアのカーボンクレジットワーキンググループを設置することが環境大臣へ指示されたことが紹介され、それを受けて、今回のシンポジウムにおいては、日カンボジアのカーボンクレジットにかかる官民の連携を一層強化したい旨、期待が述べられました。

その後登壇したソパレット環境大臣からは、世界中の気候変動の対策が求められており、カンボジアとしても2050年のカーボンニュートラルを達成していきたい旨意向が述べられました。

農水省萩原参事官からは、アジアにおける水田からのメタンガス排出量が、農業由来の温室効果ガスの20%以上を占めているという現状が共有され、温室効果ガス削減にはAWD(Alternate Wetting and Drying: 間断灌漑)が有効な手段であると紹介されました。また2025年2月に日フィリピン間のJCMにおいて、世界初となる水田からのメタン排出量削減に関する方法論が承認されましたが、今後は日カンボジア間でも連携して方法論づくりを行い、制度を展開していきたいとの意向が示されました。

提供:ジェトロ
(左)前川ジェトロ理事、(中)ソパレット環境大臣、(右)農水省 萩原参事官

シンポジウムでは、JAXAからは以下の式典の開催と衛星観測による取り組みについての発表を行いました。

・カンボジア政府へのJAXAデータパネルの引渡し式典
落合センター長からカンボジア環境省ソパレット環境大臣へ、JAXAがALOS-2をはじめとした衛星データを基に作成した高解像度土地利用土地被覆図(HRLULC)のデータを引渡しました。カンボジアでは森林保全や低炭素農業、都市計画といった土地利用のための基盤となる情報が不足していることから、環境行政だけでなく、都市計画、土地利用などのか複数の省庁において本データの活用により今後諸課題の解決や社会経済発展が期待されます。

提供:JETRO
(左)ソパレット環境大臣、(右)落合センター長

・JAXA森林データの紹介
落合センター長より、カンボジアにおける気候変動対応、持続的な開発において活用が期待されるJAXA高解像度土地利用土地被覆図、森林バイオマスマップ、マングローブマップなど、地球観測データの具体的な活用事例を紹介しました。

提供:JETRO

続いて、祖父江シニアアドバイザーより、農業関連の取り組みとして、水田からのメタンガス排出の削減のためのAWD(間断灌漑)の実施情報の把握に重要な水の管理状況の衛星による推定に関する研究を紹介しました。

提供:JETRO

これらの発表を通じて、JAXAの衛星データの日カンボジアのJCM協力を通じて、がカンボジアのクレジット活用に貢献し、日本の宇宙技術がカンボジアの発展に寄与する可能性について説明しました。

閉会の挨拶として、調査国際部バンコク駐在員事務所の中村全宏所長より、これまでの協力関係に対する謝意と、今後の継続的な協力・連携を呼びかけました。

関連情報
※間断灌漑(AWD)について: https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/news/2025/07/14/11212/index.html

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