お知らせ

2026.03.30(月)

JAXA地球観測データ利用30年を振り返る

『JAXA地球観測データ利用30年』特集の第13弾は、2025年10月24日に開催したJAXA地球観測データ利用30年記念シンポジウムにあわせてとりまとめた年表をご紹介しながら、JAXAの地球観測データ利用30年を振り返ります。また、2026年3月に記念植樹も行われましたので、その様子もお届けします。

年表から読み取る地球観測データ利用30年

JAXAの主な地球観測衛星

JAXA地球観測データ利用30年にあたって、これまでのJAXAにおける地球観測とデータ利用の歩みを振り返り、4つのテーマに基づいて、それぞれ年表にまとめました。色々な切り口で30年の進化を垣間見ることができます。

年表作成にあたっては、関係各所から過去の文献・資料や画像・写真等の資料を収集し、さらにOBの方々へのヒアリングをするなどして、過去の情報を一元的に収集し、デジタル化して改めて整理することができました。

JAXA地球観測衛星の歴史

地球観測データ解析研究センター(EORC:Earth Observation Research Center)の歩みとJAXAでこれまでに打ち上げられた18機の衛星(1機は軌道投入失敗によって消失)の運用の歴史についてまとめられています。

2026年3月現在、9機の衛星が軌道上で活躍しており、搭載されているセンサの技術が次世代の衛星に受け継がれていることや、当時の時代背景、EORCや関係部署の組織の変遷と共にどのような衛星が開発、運用されてきたかを再確認することが出来ます。

JAXAの地球観測衛星で今までに最長の運用期間を誇るのは日米合同ミッションの熱帯降雨観測衛星「TRMM」で、1997年11月28日の打上げから2015年4月8日の運用終了までの17年4か月でした。JAXA・環境省・国立環境研究所が合同で開発した温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)も2009年1月23日の打上げから17年が経過して運用を継続しており、最長運用期間の記録更新が期待されます。

参考:地球を見守る人工衛星たち
現在活躍している9機の衛星がどこを飛んでいるのか見ることができます

衛星センサ技術の系譜

『JAXA地球観測衛星の歴史』内でも矢印で衛星間の技術継承の系譜が描かれていましたが、『衛星センサ技術の系譜』では、センサを技術分野ごとに整理し、各世代のセンサによる観測画像を交えながら「どのような技術がどの方向に進化してきたか」を一望できるようにまとめられています。JAXAが開発してきたマイクロ波放射計、グローバル光学放射計、合成開口レーダ(SAR)、高解像度光学放射計、温室効果ガス観測センサ、降水レーダ、雲プロファイリングレーダなど、センサ種別に技術の系譜が示されているため、同じ“地球観測”でも目的に応じて進化の軸が異なることが分かります。

また、センサの進化の方向性は一つではなく、観測ニーズに応じて複数の軸で発展してきたこともわかります。たとえば、「空間解像度(※)の向上」によってより細部まで識別できる観測が可能になるケースや、「観測チャンネル(波長・周波数)の追加」によって捉えられる物理量が増え、これまで見えにくかった現象を把握できるようになるケースもあります。また、「観測幅(スワス)の拡大」により広域を効率的にカバーできるようになるケースや、さらに「観測密度や観測形態の進化(点から面へ)」によって、より連続的・面的に現象を追えるようになるなど、さまざまな進化がありました。観測対象については、「雲粒の動きの把握」など新しい“見る力”が加わり、利用者が必要とする情報をより直接的・高頻度に届ける方向へ開発が進められてきました。

このように本資料は、センサ名を並べるだけでなく、「どの性能要素を、どの技術で進化させてきたのか」を技術分野ごとに可視化している点に特徴があります。そのため、地球観測の発展を“衛星センサ技術の進化史”として理解する一助となると考えています。

※ 空間解像度:センサが観測した1ピクセル(またはフットプリント)が、地表面上でどれくらいの距離(m または km)に相当するかを表す指標です。一般に値が小さいほど細部を識別でき、衛星センサの代表的な性能指標の一つです。

衛星データ利用の拡大

こちらの年表では、衛星データが、受信・記録・処理・提供といった「運用フェーズ」から、地球科学研究の推進、地球観測データの校正・検証、さらには応用研究といった「利用フェーズ」へと活動の場を広げてきた経緯がまとめられています。取り上げられている項目についても、1990年から2010年までは共同研究に関する枠組みの構築などが主体でしたが、2010年から2020年には、気候/気象、農林水産、防災/災害、海洋などの様々な分野での衛星データの利用が拡大し、項目数がそれまでの10年の倍以上に増加しました。さらに2020年から2025年の5年間ではそれを上回るペースで増えており、衛星データの利用が急速に拡大していく様子が読み取れます。

TE-Japanが推定した熊本県の2025年8月10日18時を初期時刻とした河川流量の予測値の変化

2019年11月、2020年3月に名前が登場する「Today‘s Earth(TE)」はJAXAが東京大学と共同で開発した衛星データを融合した陸域の水循環シミュレーションシステムです。2020年3月に日本域版の「Today’s Earth – Japan(TE-Japan)」で、降雨量や降雪量、気温や風速といった大気物理量の予測に基づいて陸上のシミュレーションを行うことで、河川の流量や水位、氾濫面積の割合、土壌水分量などを30時間以上先まで予測し、地図上に表示することができるようになりました。

参考:【ティちゃんと学ぶ!】Today’s Earthウェブページ解説

解析技術・データ提供の発展

データ解析技術の発展、データ提供の発展、そしてデータ量の発展と大きく3つの観点から、30年以上にわたる歩みをまとめました。この間に、解析技術の発展と数値モデルの融合により、現在はより高度な「情報」も利用者に提供できるようになりました。EORCが設立された1995年当時は、データの保存にテープ媒体が用いられ、容量も数十GB程度でした。データの提供方法も、アナログ印刷のパンフレットを配布することや、わずか1.4MBという今では極めて小容量なフロッピーディスクでデータを持ち出すこともありました。また、データを保存するためのデータアーカイブシステムは、設立時は30TBの大容量テープ装置でしたが、2025年現在は14PB以上の大容量ハードティスク装置を運用しており、衛星データ量の著しい増加を実感できます。

生成AIを使って関東の地表面温度を表示させた一例

さらに、2025年には「JAXA Earth API」(Application Programming Interface)が公開され、ユーザ自身が衛星データを自由に可視化できる環境が整いました。こちらは、専門知識が無くてもブラウザ上でデータを閲覧できる「JAXA Earth Dashboard」にも使われており、専門家でない方でもより手軽に衛星データにアクセスすることができるようになりました。また、2026年1月には生成AIからの呼び出しにも対応できるようになりました。

『解析技術・データ提供の発展』の年表は他の年表と少し異なり、「EarthCAREの初画像をALOS-4打上げ前に・・・」といった、当時の気持ちも垣間見える年表となっていますので、特に是非じっくりと読んでみて欲しい1ページです。

これらの年表のPDFファイルはJAXA地球観測データ利用30年 特設サイト「これまでの歩み」にて公開しています。合わせてご覧ください。

EORC設立30年を記念して記念植樹を行いました

記念植樹式の様子(左:瀧口第一宇宙技術部門長による「最後の土かけ」、右:参加有志の記念撮影)

2026年3月27日、地球観測データ解析研究センター(EORC:Earth Observation Research Center)設立30年を記念して、筑波宇宙センター内のEORCの執務室脇に記念植樹を行いました。植樹した木は「蝋梅(ロウバイ)」です。冬に、まるで蝋(ろう)でコーティングしたような半透明の黄色い花を咲かせるのが特徴で、その香りの強さから「四大香木」の一つとされています。ロウバイは12月から2月というまだ寒いうちから、花を咲かせることから「先見・先導」という花言葉がつけられています。過去30年にわたって将来を見通して地球観測衛星データの利用を進めてきた実績と、今後も先に立ってみちびいていく未来を祈念してこの木が選ばれました。

最後に・・・

1年間お付き合いいただきました「JAXA地球観測データ利用30年」の特集記事は今回で最後となります。最後に、JAXA第一宇宙技術部門地球観測研究センター(EORC) 落合治 センター長より皆様へメッセージをお届けします。

JAXA第一宇宙技術部門地球観測研究センター(EORC)落合治 センター長

JAXAの30年に及ぶ地球観測データ利用研究活動は、多くの先達のみなさまの大いなるチャレンジ精神と知見、そして研究活動により進んできました。現在、我々は9機の地球観測衛星を運用し、観測されたデータを受信・処理・保存し、国内外の研究者と共に解析・利用を推進しております。また、新たな衛星の開発につながる最先端の研究にも邁進しております。限られたリソースの中で我々は地球を診断するプロとして誇りをもって仕事をしております。国際的にもNASAやESAなどの海外宇宙機関からのJAXAへの信頼は揺るぎないものとなっています。さらに、これまで蓄積された30年以上に及ぶデータの活用により、新たな衛星データ利用の道が切り開かれようとしています。AIをはじめとする革新的な技術と組み合わせることによって、地球観測衛星データは現状をモニタリングするだけではなく、将来を予測し人々の行動の科学的な根拠となるような情報を提供していくことが可能となると信じております。JAXAの地球観測データ利用研究活動は、今後も社会課題解決への利用と世界最高レベルの研究を目指します。

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