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2021.12.17(金)

【日本人優勝チームのコメントを追記】地球観測衛星データの活用に向けたバーチャルハッカソン(Space Apps Challenge 2021)の開催結果について

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、米国航空宇宙局(NASA)と協力し、地球観測衛星データの活用や探査等に関するバーチャルハッカソン(※1)「Space Apps Challenge 2021」(2021年10月2日、3日開催)の優勝10チームを選定いたしました。

「Space Apps Challenge 2021」の参加チーム数は世界162の国と地域から4,534チームにのぼり、JAXA、NASA等が提供する様々な地球観測データを利用して、COVID-19などの感染症や災害・気候変動等に対するアプリケーションの開発検討がなされました。そして最終的には2,814件の課題への解決策(プロジェクト)が提出され、第一次審査でファイナリスト37チームを選出、最終審査を経て優勝10チームを選定いたしました。

JAXAは、今回のハッカソンで、「JAXA地球観測衛星データの情報を提供」、「提出されたプロジェクトの審査」などを実施しました。JAXAの地球観測衛星データを世界に広く知ってもらう機会となりましたので、これを契機に、JAXA衛星のデータ利活用が拡大し、社会の課題解決に貢献することを期待いたします。 

※1:ハッカソンとはエンジニアなどがチームを作り、共通の課題に対してアプリケーションやサービス開発し成果を競う開発イベントです。

1.バーチャルハッカソン「Space Apps Challenge 2021」の開催実績

●主催:NASA、JAXA、 ESA(欧州宇宙機関)、 ASA(オーストラリア宇宙局)、AEB(ブラジル宇宙機関)、 CSA(カナダ宇宙庁)、 CONAE(アルゼンチン宇宙活動委員会)、NSSA(バーレーン国家宇宙科学機関)、AEP(パラグアイ宇宙機構)、SANSA(南アフリカ国立宇宙機関)

●開催日:2021年10月2日(土)~3日(日)

●参加者:28,286人(162の国と地域)

●提出されたプロジェクト数:2,814件

2.優勝10チームのプロジェクト概要

賞/チーム名 プロジェクト概要
Best Use of Data
(データアクセスをし易く、またはユニークなデータ活用をしている賞)
Cambridge Asteroids
JavaScriptライブラリであるThree.jsと3D作成ソフトBlenderを用いて、既存の小惑星や彗星など様々な三次元形状の光カーブを生成するWebインタフェースを開発した。小惑星の回転軸、太陽の角度、回転速度を選択した後、ユーザはヘッドレスのBlenderインスタンスにリクエストを送ることで、対応する光度曲線を生成することができる。本プロジェクトは、様々天体の光度曲線を見つけるためのアクセス可能なインタフェースをユーザに提供し、ユーザが自分のものをアップロードすることができる。これは、数年後にルーシー探査機がトロヤ群小惑星に到着したときに観測される小惑星の理解を深めるために使用できる重要な手法である。
Best Use of Science
(科学的手法や科学を有効活用している賞)
Ani’s Cuff
昆虫の種の数は、動物界全体の種の半分を占めている。人類の生存は、現在は失われつつある昆虫の多様性にかかっている。現在の生物発生プラットフォームは、記録を残すだけで解決しようとしている。 「de Bugger」(プロジェクト名)は、地理的な生物情報のビューアーであるだけでなく、時間、空間、種を超えた推測をすることができる。それは、ニューラルネットワーク(CNN)の枠組みであるU-Netによって、様々な地球観測データやバイオベクターデータを用いてモデル化される。「de Bugger」は、生物多様性を保全しようとする人で、データが不足している人々対し、今後の意思決定のための参考資料を提供することで、これら人々へメリットをもたらす。
Best Storytelling
(物語を引用する手法を通じて、オープンデータの可能性を最もエイティブに伝えている賞)
Space Travelers
スペース・トラベラーズは、10歳から14歳までの子供が、宇宙飛行士が長距離移動中(火星への旅など)に直面しうる危険について学べるゲームアプリケーションである。宇宙で直面する危険には、隔離、放射線、重力場、環境、地球からの距離などがある。プレイヤーは、ゲームに含まれるすべてのミッションを楽しみながら、一人でも友達とでも、同時に学ぶことができる。スペース・トラベラーズは、子供たちの興味を促せるリアルな体験をもたらすという点で、重要な役割を担っている。
Best Mission Concept
(成立しうるコンセプト、デザインの賞)
Mohakash
これまでのアポロ計画では、宇宙飛行士がレゴリスの取り扱いに苦労したことが報告されている。レゴリスは太陽放射の吸収によって電離した粒子であり、宇宙服や機器に付着しやすい。また、重力の小さい環境下で、レゴリスをすくい上げることは困難であった。そこで、RASSORのバケット技術を使って、レゴリスをすくい、閉じ込めるARSSを開発した。専用バケツは、従来の一般的なハンドルに簡単に取り付けることができ、かさばらないので、宇宙探査や植民地化のためのサンプル採取や惑星表面の清掃に便利なツールとなっている。
Local Impact
(ローカルな影響の可能性を最大限に発揮している賞)
Landslide Detection Squad
地すべりの際の早期警報は、危険にさらされている地域社会や緊急対応のために非常に重要である。森林に覆われた斜面では、樹木が傾いたり、樹冠構造が変化したりすることで、土砂や岩石の移動を示すことがあり、これが地すべり現象の前兆となる。高解像度画像を提供する新しいセンサーと、樹木検出のための深層学習の技術を活用し、地すべりの危険性を示す斜面での樹冠の動きを検出する方法を提案し、プロトタイプを作成した。この情報は、地すべりリスクモデルを強化するために使用され、動的なリスクマップを生成するシステムに組み込まれ、状況が危機的である場合には警告を発し、政府機関の計画を支援する。
Arts and Technology
(技術力と想像力を最も効果的に融合させた賞)
Jimmy In the Box
ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の打ち上げと展開に、折り紙のような折りたたみと展開が使われていることに驚かされた。このプロジェクトでは、さまざまなスキルや経験を持ち寄って、JWSTのコンピュータによる折り紙モデルを作成し、その素晴らしいデザインと「気持ちの良い」展開の手順を紹介している。
Most Inspirational
(解決策が最も心に響いた賞)
BIOSHI
ダリエン地峡における森林破壊について、先住民コミュニティの訴えを見ると、彼らには問題を解決するためのリソースがなく、その声が封じ込められ、沈黙させられているかがわかる。衛星画像で森林伐採率を把握するシステムと、戦略的なポイントに設置した音響センサーを組み合わせ、違法伐採や生態系を脅かす行為があった場合に警告を発する事業を検討した。一般的なアイデアとしては、ダリエン国立公園の最新かつ正確な衛星画像を入手し、長期的に森林減少率を示し、進行中の違法伐採を防ぐことである。
Galactic Impact
(地球上や宇宙での生活を向上させる可能性が最も高い賞)
4 Seeds
制作した製品「インフィニポッド」は、エアロポニックスと呼ばれる土を使わない栽培方法を採用し、根が空中に垂れ下がり、液状の肥料が細かい霧状で供給されるため(98%の節水が可能)、コンパクトなインスペースデザインを実現した。スペースを有効に活用するために、栽培ポッドは棚の形に折り畳むことができ、また、必要に応じて栽培エリアを宇宙船のクルーが見えるように拡張することも可能である。また、収集したデータを整理して、より良い栽培方法を見つけるために作ったアプリケーションを、他のユーザーが使うこともできる。宇宙でも地球でも、「インフィニポッド」はどこでも栽培が可能だ。
Best Use of Technology
(最も革新的な技術の活用例を示している賞)
Change Maker
地球は17万3,000テラワットという大量の太陽エネルギーを受けており、それは地球上の人口の消費するエネルギーの1万倍にも及ぶ。しかし、太陽エネルギーに関する多くの有用な情報は、一般の人々、特に住宅所有者にはあまり知られていない。NASAのデータを使いやすいダッシュボードにまとめたモバイルアプリ「SHINE」を開発した。このアプリを使えば、住宅所有者は気象データへのアクセス、電気出力のモニタリング、将来の電気節約量の推定などを簡単に行うことができる。このアプリは、住宅所有者がソーラーパネルを購入する際のより良い判断材料となり、より多くの人々が太陽エネルギーを利用して地球を救うことを目的としている。
Global Connection
(技術で世界中の人々を繋いだ賞)
EAGLE AI
海洋プラスチックを最大100%の精度で自動的に検出、識別、定量化、追跡するAI搭載の追跡システムを開発。プロジェクトの中で、最も重要な付加価値は、海洋プラスチックの動きをいかにダイナミックに追跡し、予測できるかということであり、これにより状況に柔軟に対応することができるようになる。

※優勝10チームの情報: https://2021.spaceappschallenge.org/awards/
※ファイナリスト37チームの情報: https://2021.spaceappschallenge.org/awards/global-finalists/


3.本ハッカソンの最終審査にあたってJAXA審査委員からのコメント

JAXA 竹島 敏明(第一宇宙技術部門地球観測研究センター、研究領域主幹)
ハッカソンの様々な課題は、既存の技術をうまく組み合わせれば対応できそうなものから、最先端の研究者もその解決策を模索しているようなものまで、様々なレベルのものがあり、その課題に世界中の多くの方々が興味を持ってチャレンジして頂いたことは素晴らしいことだと思います。何よりも、若い世代の人たちのアプリケーション開発能力の高さには驚かされました。その一方で、観測データの意味する範囲や誤差、条件等もっと深い理解があれば別の提案になったかもしれないと思うものもあり、データ利用促進の難しさを改めて感じました。

4.日本人優勝チーム「Jimmy In the Box」からのコメント

チームメンバー:辰巳孟司(14歳 9年生)、鈴木帆奈(12歳 6年生)矢代裕隼 (11歳 5年生)、辰巳満咲(16歳 11年生)
私たちは、折り紙が大好きでプログラミングが得意な小中高校生チームです。この2つのスキルを応用していろいろなアイデアを出し、ウェッブ望遠鏡について新しいことを学び、ユニークな模型を生み出すのは、とても楽しかったです。折り紙、電子工作、プログラミングの作業に夢中で取り組みました。今は、望遠鏡以外にどんなものを折りたたんで宇宙へ運べるかに興味があります。ソーラーパネルだけでなく、パラボラアンテナは?乗り物は?居住施設は?など、ワクワクする考えが頭を駆けめぐっています!

私たちの「コンピュータ化された」折り紙模型の作り方は以下のプロジェクトページにまとまっています。準備・作り方など、写真と動画を使って説明しています。折り紙に興味がある方、プログラミングに興味のある方、両方に興味のある方、ぜひ試してみてください!

https://github.com/HSSBoston/jimmy-in-the-box

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