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みちびきを活用したオンボードPPP技術

オンボードPPP技術

ミッション

「オンボードPPP技術」衛星の位置をリアルタイムかつ高精度に推定

オンボードPPP技術は、衛星測位システム(GNSS)から放送される2周波の測位信号と、準天頂衛星「みちびき」から放送される高精度測位補強サービス(MADOCA-PPP)を使用して、軌道上(オンボード)でリアルタイムにcm級の衛星軌道位置推定を行う技術です。

現在、「だいち」シリーズ等の人工衛星の軌道位置を推定するためには、GNSSから放送される航法メッセージを使用しています。航法メッセージに含まれる測位衛星の軌道とクロックの情報は誤差が大きいため、衛星の位置決定精度は数m~十数m程度しか実現できません。みちびきのL6信号で配信されるMADOCA-PPPを用いることで、航法メッセージに含まれるGNSSの軌道とクロックの誤差を補正し、正確な位置情報を取得することが可能になります。

オンボードPPP技術の早期実現を目指し、軌道上で高分解能の衛星画像処理を行うための高性能な計算機と組み合わせて、以下に示すオンボードPPP技術の軌道上実証実験(アルゴリズム検証)を行います。

QPS-SAR10号機に搭載するオンボードPPP実証機を使用して、「軌道上で準天頂衛星からのL6E信号(MADOCA-PPP)とGNSSからの2周波の測位信号を受信して、リアルタイムに10cm以下(3D RMS)の高精度単独測位が実現できること」を、SLRデータ等を使用して評価します。

オンボードPPP技術の成果は、地球観測衛星ユーザへの画像データ提供時間の短縮や衛星画像の精度向上、宇宙天気予報の高度化や上層大気観測への貢献等が期待されます。

技術

  • 軌道上で高精度単独測位(PPP)を実現するソフトウェア
  • みちびきの高精度測位補強サービス
  • オンボードPPP実証機

軌道上で高精度単独測位(PPP)を実現するソフトウェア

高精度単独測位(Precise Point Positioning: PPP)は、高精度な軌道時刻情報を用いることで、基準局によらず1台の受信機でcm級の位置決定を行うことができます。これまでJAXAは、みちびきの利活用拡大や衛星測位・航法技術の高度化を目的として、地上でcm級の測位を達成するために、PPPの精度向上及び収束性改善に取り組み、高精度単独測位を行うソフトウェア「MALIB」の研究開発を進めてきました。この成果を活用して、軌道上で高精度単独測位を実現するソフトウェア「MALIB LEO」の機能拡張を行いました。解析結果から10 cm以下(3D RMS)の精度を達成することを確認しています。軌道上での実証結果を踏まえて、オンボードPPPアルゴリズムを書き換える実証サイクルを繰り返し、早期にアルゴリズムの技術成熟度を向上することを目指します。

図:MALIB LEOの解析結果
(Sentinel-6Aの実観測データをみちびきのMADOCA-PPP補正データを用いて解析)

地上版の「MALIB」は、マニュアル・テストデータ・ソースコードをGitHubにて公開しています。
GitHub – JAXA-SNU/MALIB

みちびきの高精度測位補強サービス

精度の高い測位を行うためには、GNSSの正確な軌道情報(精密暦)が必要不可欠です。GNSS軌道計算ソフトウェアであるMADOCAを開発し、精密暦の精度改善に関する技術開発を長年行ってきました。この開発成果をベースに、内閣府が2024年4月からみちびきのL6E信号を用いてMADOCA-PPPのサービスを提供しています。MADOCA-PPPはみちびきの信号が受信可能なアジア、オセアニア地域で利用することができます。他国のPPP補強サービスと比較してデータ伝送レートが高く、より多くの衛星の補強情報を配信しているため、測位精度の向上に繋がります。

PPP補強サービスの比較

QZSS
MADOCA-PPP
Galileo
HAS
BeiDou
PPP-B2b
サービス範囲 QZSSからの信号が
受信可能なエリア
全世界 中国とその周辺地域
補強対象衛星 QZSS: L1C/A, L1C/B,
L1C, L2C, L5
GPS: L1C/A, L1P, L1C,
L2C, L2P, L5
Galileo: E1, E5a
GLONASS: G1, G2
GPS: L1/L5; L2C
Galileo: E1/E5a/E5b/E6;
E5 AltBOC
GPS: LNAV
Galileo: I/NAV
GLONASS: L1OCd
BDS: CNAV
補強信号 軌道
クロック
コードバイアス
搬送波位相バイアス
軌道
クロック
コードバイアス
搬送波位相バイアス
軌道
クロック
コードバイアス
フォーマット Compact-SSR 同左 SSR
伝送レート 2,000 bps 448 bps 1,000 sps
水平精度(95%) 30 cm以下 20 cm以下 同左
垂直精度(95%) 50 cm以下 40 cm以下 同左
収束時間 30分以下
(電離圏補正情報有:
10分以下)
5分以下 20分以下

MADOCA-PPPの詳細は、以下の内閣府公式サイトをご参照ください。
https://qzss.go.jp/technical/system/madoca.html

オンボードPPP実証機

オンボードPPP実証機の構成

GNSS機器

オンボードPPP技術の実証実験のため、複数GNSSの2周波以上の測位信号(L1、L2、L5信号)及び準天頂衛星からのL6E信号を軌道上で受信することができるGNSS受信機、アンテナ、増幅器を搭載します。

オンボードコンピュータ

軌道上で高精度単独測位を行うソフトウェア「MALIB LEO」を搭載し、衛星バスとのテレコマI/Fを行うため、宇宙用のオンボードコンピュータを採用しています。

オンボードAI_URL:https://www.kenkai.jaxa.jp/research/sasshin/onboard-ai.html

コーナキューブリフレクタ「Mt.FUJI」

JAXAの追跡ネットワーク技術センターが開発したコーナキューブリフレクタ「Mt.FUJI」を搭載し、SLR(衛星レーザ測距)を実施してオンボードPPPの精度評価に活用します。 Mt.FUJIの詳細は以下のサイトをご参照ください。
https://track.sfo.jaxa.jp/project/mtfuji.html

将来の人工衛星への貢献

衛星画像データのユーザ提供時間(レイテンシ)短縮

高分解能センサを搭載している地球観測衛星は、画像処理のために「高精度軌道暦」が必要です。地球観測衛星の「高精度軌道暦」を生成するためには、「測位衛星の高精度軌道暦」と「地球観測衛星に搭載しているGNSS受信機が受信した測位信号」が必要であり、現状は数時間から数日の処理時間が掛かります(※処理時間は軌道暦の精度による)。

地球観測衛星上でPPPを行うことができれば、リアルタイムにcm級の衛星軌道位置を計算することができるため、ユーザへの画像データ提供時間を大幅に短縮することが可能になります。地球観測衛星で取得した画像データをユーザに提供するまでの時間(レイテンシ)は「数日」から「数時間」まで短縮できる見込みです。

オンボードPPP技術の概要

災害対応の際に、観測から5時間後に防災ユーザに提供している判別情報は、基準軌道やオンボードGPSR航法解等を使用して画像処理を行っているため、衛星オンボードPPP技術を採用することでより鮮明な衛星画像に基づいて被害区域の判別を行えるようになります。

GNSSから放送される軌道暦を用いたALOS-2オンボードGPSR航法解を使用して処理した衛星画像と、精密暦を使用して処理した衛星画像を比較すると、オンボードGPSR航法解を使用して処理した衛星画像には、長波長のノイズが載っています。一方で、オンボードPPPと同程度の精度である精密暦を使用して処理した衛星画像には、長波長のノイズは無く、鮮明な画像が得られていることが確認できます。

北海道胆振地震時のALOS-2画像(出典:国土地理院)

地球観測衛星の全体システム効率化、運用省力化

衛星オンボードPPPは、低軌道衛星の位置をcmのオーダ(1σ)でリアルタイムに決定する技術であるため、本技術を実現することができれば、高分解能センサを搭載する現状の地球観測衛星の地上システムで整備が必須である高精度軌道決定システムを簡素化することが可能になります。

また、JAXAが研究を進める衛星オンボードで画像処理を行う技術と連携することができれば、衛星オンボードで処理した画像を直接ユーザに提供することが可能となるため、更なる全体システム効率化や運用省力化に繋がります。

低軌道衛星コンステレーションへの適用

低軌道衛星コンステレーションに、オンボードPPP技術を搭載すれば、高価な原子時計を衛星に搭載しなくても、各衛星の軌道・クロックの高精度推定が可能になります。この情報に基づいて、既存のGNSSとは異なる周波数で測位信号を生成して地上に放送することができれば、現状のGNSSよりもロバストな低軌道衛星群による衛星測位サービス(LEO-PNT)を実現することが可能になります。

大気密度変動予測への適用

低軌道衛星に、オンボードPPP技術を搭載すれば、リアルタイムにcm級の軌道決定が行えるようになるため、太陽活動の変化に伴う、大気密度変動をリアルタイムに検知できるようになり、即応性の高い軌道予測・衝突リスク予測が可能になります。LEO衛星間の衝突防止、STM(Space Traffic Management)にも有用です。

関連情報

小型技術刷新衛星研究開発プログラムにおいて新たな宇宙利用サービスの実現に向けた軌道上実証に係る共同研究契約を締結

地球を見守る人工衛星

陸地、海洋、大気の状態を観測するための地球観測衛星です。災害や気候変動に対応するために、宇宙から私たちの地球を見守っています。

暮らしを支える人工衛星

通信を行ったり、測位(自分の位置を知る)を行ったりするための人工衛星です。新しい技術開発をするための人工衛星も作っています。

衛星プロジェクト ストーリー

人工衛星への熱き想い!

人工衛星は機械ですが、人工衛星を研究開発して運用するために、JAXAの宇宙開発の現場ではプロジェクトチームとして多くの人が協力して働いています。ここでは衛星プロジェクトを支えるストーリーを紹介します。ミッション遂行に向けた熱い想い、大変な話、感動する話、面白エピソード、普段聞けない裏話などなど。

衛星プロジェクト ストーリー イメージ画像
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ってだれが運営しているの?

地球観測利用 イメージ画像1
地球観測利用 イメージ画像2

サテライトナビゲーター(サテナビ)は、暮らしを支える人工衛星の開発・運用をしているJAXA第一宇宙技術部門が運営しています。JAXA第一宇宙技術部門の詳細についてはこちらへ。

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