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大気吸入型イオンエンジン
軌道上実証システム(ABIE-X)

大気吸入型イオンエンジン軌道上実証システム

ABIE-Xの概要

大気吸入型イオンエンジン(Air Breathing Ion Engine:ABIE、エイビーと呼称)とは、日本で考案された、全く新しい電気推進機のコンセプトです。従来の人工衛星・探査機のエンジンは、地上で燃料を積み、それを用いて宇宙空間で推進力を得ることが一般的です。これに対して本技術は、宇宙空間にわずかに存在する大気を集めて燃料とし、イオンエンジンとして推進力を得るものであり、宇宙で燃料を現地調達するという新たな試みになります。主に地球周回の超低高度軌道(Very Low Earth Orbit:VLEO)や火星・金星等の大気惑星探査の将来ミッションに活用が期待されます。

大気吸入型イオンエンジン軌道上実証システム(ABIE on-orbit eXperiment system:ABIE-X)は、上記コンセプトの原理実証を狙う軌道上実験のシステムです。新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)の3号機に、技術実証ミッションの一つとして搭載を予定しており、HTV-Xが国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給を終えて大気圏突入するまでの期間で、世界でまだ実現されていない軌道上での大気圧縮・イオン化プロセスの実証を行います。

図1 ABIEのコンセプト全体像とABIE-Xの実証スコープ

ABIE-Xの構成

ABIE-Xは図2に示す9つのコンポーネントから構成されています。大気の捕獲はインテークにより行われ、一度流入してきた大気粒子が逆流しにくい形状設計によって、内部で大気が蓄積し圧縮されます。この大気圧縮性能を、インテーク内外に2個ずつ配置した電離真空計により評価します。続いて、圧縮された大気は、インテーク内部にあるイオン源によりイオン化(プラズマ発生)されます。プラズマの電流量や組成を各種センサで計測するとともに、カメラを用いて、発生したプラズマの画像を取得する計画です。また質量分析計により、燃料となる軌道上大気の組成データを取得します。

図2 ABIE-Xの構成

運用シナリオ

①初期段階(HTV-X打上げ~ISS到着まで)
HTV-Xに搭載されてロケットにより打上げられた後、ISS到着までの往路輸送中に軌道上チェックアウト(機器の初期機能確認)を実施します。

②ISS係留段階(ISS到着~離脱、実証段階開始まで)
サバイバルモードとして保温運用のみを行い、実証タイミングまで待機します。

③技術実証段階
大気圏突入までの間、保持高度を変えながらABIE-Xの実験(大気測定・イオン化等)を行います。

図3 運用シナリオ

今後の取り組み

ABIE-Xでは軌道上大気から、いかにプラズマを生成できるかに着目しています。今後は、このミッションで得られる性能取得データや低高度軌道環境の大気圧・大気組成の調査結果等を基にして、実際に推進力を発生できるエンジンシステム及びABIE搭載衛星の実現を目指しています。将来的には半永久的に飛行し続けられる衛星という夢のような話にも繋がり、技術的なハードルは多く存在しますが、一歩ずつ着実に研究開発に取り組んでいきます。

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