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地球の未来を守るための
温室効果ガス長期観測プロジェクト

温室効果ガス観測技術衛星2号 いぶき2号(GOSAT-2)
プロジェクトマネージャ平林 毅

画像:温室効果ガス観測技術衛星2号(GOSAT-2)

「いぶき」(GOSAT)の観測データは、全地球規模で大気中の二酸化炭素量が増えていることを、はっきりと示しました。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を知り、それを抑えていくことが、地球と人類の未来にとって極めて重要であると、あらためて確認されたのです。
温室効果ガス観測技術衛星2号GOSAT-2は、「いぶき」の任務を引き継ぎ、より高い精度で地球大気中の温室効果ガスの監視を続けます。

「いぶき」シリーズは、温暖化を監視する天空の目

―GOSAT-2はどのような人工衛星ですか?

GOSAT-2は、温室効果ガスを観測している「いぶき」(GOSAT)の後継機で、「いぶき」と同様に環境省、JAXA、国立環境研究所の3者による共同プロジェクトです。温室効果ガスには色々なものがありますが、二酸化炭素とメタンの2種類で温室効果への寄与が約8割を占めます。その二酸化炭素とメタンを中心に、地球の大気中の温室効果ガスをグローバルに観測していくことが、「いぶき」(GOSAT)とその後継機であるGOSAT-2に課せられた使命です。

GOSAT-2軌道上概念図

―観測を続けている「いぶき」から、どのようなことがわかったのでしょうか?

「いぶき」CGイメージ

地図に投影した「いぶき」の観測データを見ると、地球上の多くの場所で、夏は二酸化炭素の濃度が下がり、冬は上がっていることがわかります。これは、夏は植物が二酸化炭素を吸収するために下がり、冬は植生が減り、また暖房等で二酸化炭素の排出量が増えるために上がっていると考えられます。一方、同じ月のデータを年をまたいで見ると、年々、二酸化炭素の濃度が高まっていることがわかります。夏は確かに植生のおかげで濃度が下がるのですが、それでも二酸化炭素の濃度は年々、少しずつ上がってきている。こうしたことも、「いぶき」のデータからわかることです。
これまで温室効果ガスの観測ポイントは十分な数がなく、観測地域も限定されていましたが、人工衛星である「いぶき」は地球全体をまんべんなく周り、データを取得してくれています。こうしたデータをもとに、将来の気温予測モデルの誤差を減らしていくことが、温暖化政策にとってとても重要なのです。

GOSAT-2打ち上げまで、「いぶき」にはがんばってほしい!

―「いぶき」はまだまだ運用を続けられますか?

「いぶき」は2009年の打ち上げですから、2015年夏の時点で6年半ほど経過したことになります。設計寿命は5年間でしたが、その期間を超えて、現在も運用が続けられています。後継機となるGOSAT-2の打ち上げは2017年度を予定していますので、それまでは「いぶき」を大切に運用して、できるだけ長持ちをさせたいと考えています。
また、プロジェクトに携わる者としては、「いぶき」シリーズが3号機、4号機、と続いていってほしいと願います。3号機は国の宇宙基本計画の中で、2022年度の打ち上げを目指すことが決定されています。「いぶき」シリーズが「ひまわり」のように、人々の生活にとって重要な人工衛星として根付いていくように技術的に貢献をして、後継にバトンを渡していくのが我々の大きな使命だと思っています。

「いぶき」が観測した二酸化炭素濃度

※それぞれの画像をクリックすると拡大されます

「いぶき」のほかにも、気候変動やその要因となる物質を観測する人工衛星が何機も打ち上げられていますが、こうした状況にはどのような意味があるのですか?

将来の温暖化予測モデルにはまだまだ色々な誤差要因があります。複数の人工衛星を使ってさまざまなデータを集めることで、予測モデルに残る誤差要因を減らし、予測のばらつきを減らしていけると考えています。「いぶき」で観測する大気中の温室効果ガスの情報に加え、EarthCAREやGCOM-Cが観測する雲・エアロゾルや炭素循環などの情報などと併せることで、予測を少しずつ精緻にしていくことができるはずです。
アメリカ(NASA)は2014年にOCO-2という人工衛星を打ち上げました。OCO-2は「いぶき」とは異なる方法で二酸化炭素を観測する人工衛星なのですが、ここでも国を越えた協力が行なわれています。具体的に言うと、GOSATとOCO-2という2つの人工衛星で同じ場所を測り、データをつき合わせることで、それぞれの人工衛星の観測データの誤差を低減し、2機の人工衛星の精度を高めていこうとしています。観測したデータを真の物理量に変換するとき、校正(キャリブレーション)や検証(バリデーション)という作業が必要になってくるのですが、アメリカネバダ州の砂漠にNASAとJAXAのスタッフが集まって、まさに6月のこの時期に、校正と検証のための作業が行なわれているところです。なお、こうした協力は、「いぶき」とOCO-2の間だけでなく、GOSAT-2も含めることが決まっています。

「いぶき」の成果を生かしつつ、新たな試みも

―GOSAT-2が観測する予定の物質を教えてください。

GOSAT-2が観測するのは、二酸化炭素、メタン、水蒸気、オゾン、一酸化炭素です。基本的には「いぶき」と同じですが、今回、一酸化炭素が追加されました。

―どうして一酸化炭素が追加されたのですか?

大気中の二酸化炭素には、自然由来のものと人間の社会活動に由来するものがあります。一酸化炭素を測ることによって、検出された二酸化炭素が人為起源のものかどうか、つまり化石燃料などが燃焼されて出たものかどうかの把握につながる可能性があると考えられています。化石燃料などの有機化合物で不完全燃焼があると一酸化炭素が出てきます。そこで、一酸化炭素の観測を通して、検出された二酸化炭素が人為起源かどうかの把握につながるか評価をする予定です。

―観測装置は「いぶき」からどう変わったのでしょうか?

「いぶき」シリーズに搭載されている温室効果ガスの観測装置(センサ)は、太陽から出て地表面で反射された赤外線や、温められた地球自体から放射される赤外線のスペクトルを観測し、大気中に温室効果ガスがどれだけ含まれているのかを算出します。
太陽からの光や赤外線は幅広い波長の光が連続したものですが、その光が二酸化炭素やメタンを通過する際には、光のある特定の波長成分だけが吸収されるという性質があるので、スペクトルにその部分だけ凹みが生じます。また、吸収される光の量はガスの濃度に比例します。従って、その凹みの波長と量を見ることで、人工衛星と地上との間に、観測対象の気体がどれだけの量あるのか推定するしくみになっているのです。ところが、途中に雲があると、雲で光が反射してしまうために有効な処理ができず、そういうポイントは処理に使っていませんでした。GOSAT-2では、そうした雲に邪魔をされて処理できない点を減らすために、観測センサに付属する視野確認用のカメラの画像から雲の位置を自動判定し、雲のない場所に観測センサの向きを変える機能を搭載しました。

「いぶき」搭載センサで観測した太陽光スペクトルと吸収線

温室効果ガスによる光の吸収

―観測のエリアや観測精度は大きく変わったのでしょうか?

例えば、「いぶき」は取得したデータをもとに1000km四方(1辺1000kmのメッシュ)で3カ月ごとの二酸化炭素とメタンの濃度を推定していましたが、GOSAT-2では、500km四方の範囲で1ヵ月平均で推定していくことになります。まだ具体的な計画は決まっていませんが、3号機以降ではこのメッシュをさらに小さくして、時間の幅も縮めていくことが衛星性能として求められるようになると推測しています。
また、精度については、1号機の「いぶき」の観測精度は4ppmを目標に開発しましたが、GOSAT-2では、センサの感度が向上したことや雲を避けた観測による有効データ数の増加によって、8倍の0.5ppmの実現を目標としています。今、大気中にある二酸化炭素は約400ppmくらいですから、「いぶき」はその1%ほどの誤差内で観測することを目標にし、実際にはそれ以上の性能を実現できています。GOSAT-2では、そこからおよそ1桁、さらに精度を向上させることを目標としています。

―GOSAT-2が搭載しているもう1つのセンサのことを教えてください。

ここまで温室効果ガスを測るセンサについて解説してきましたが、GOSAT-2にはもう1つ、雲とエアロゾルを観測するセンサが搭載されています。このセンサも「いぶき」から搭載されていますが、今回新た加えられたのがPM2.5やブラックカーボンの濃度分布を推定する機能です。PM2.5を直接観測するわけではありませんが、その濃度を推定するためのデータが取れるセンサとなっています。

GOSAT-2の開発状況

―GOSAT-2プロジェクトはどこまで進んでいますか?

GOSAT-2は2017年度の打ち上げ予定ですので、それまであと3年を切っています。これからが開発の山場となります。今は、設計を最終的に確定していくための審査をしている段階で、これが終わったところで製造に入ります。

―かなりスピーディな進行に見えますが、このような短い開発スケジュールは珍しいのではないですか?

プロジェクトがスタートしたのは昨年2014年の4月です。スタートから打ち上げまで4年弱というのは、JAXAの衛星の中でも短期間の部類に入りますが、短い開発期間で打ち上げまでできることには、いくつか理由があります。ひとつが、1号機の実績があること。もう1つ大きいのが、他の人工衛星で既に開発済みのものでGOSAT-2でも使えるものは最大限活用していることです。
人工衛星には、姿勢制御やバッテリ、通信のための機器類、衛星の主構造等、衛星の基本部分である「衛星バス」と呼ばれる部分があります。GOSAT-2では「だいち2号」(ALOS-2)の衛星バスを最大限に活用しているため、改造もわずかで済み、少ないリスクで短い期間での打ち上げが実現できるのです。

図書館で手にした本が宇宙開発に興味をもつきっかけに

―平林さんがJAXAに入社されたきっかけを教えてください。

文系にするか理系にするかで進路を迷っていた高校2年の時、たまたま図書館で手に取ったのが宇宙開発事業団が監修した宇宙開発の本だったんです。「これこそ自分がやりたいことだ」と実感して、その時に「宇宙開発をやりたい。宇宙開発事業団に入りたい!」と思ったんです。今はまだ実現していませんが、その本にはスペースコロニーで人が暮らすとかそういう内容のことも紹介されていて、そのようなやりがいのある仕事をしてみたいと強く感じました。

画像:温室効果ガス観測技術衛星2号(GOSAT-2)プロジェクトマネージャ 平林 毅(1)

―プロジェクトマネージャとして苦労したことはどんなことがありますか?

GOSAT-2は後継機ですので、その前にあった1号機の「いぶき」の貴重な知見を最大限に活かしながら、改良を図ることが大切なわけです。一方、私自身は、GOSAT-2プロジェクトが発足した2014年4月のタイミングでプロマネとして新たにメンバーに加わりましたが、「いぶき」の開発と運用を通じた長年にわたる知見というのは、短期で埋められるような簡単なものではないんですね。幸いにも長年ずっと「いぶき」をやってきたメンバーが何人かGOSAT-2プロジェクトに引き続き加わってくれていますし、その他にも、別の衛星プロジェクトを経験したメンバーもいます。プロジェクトを進めていくうえで私なりの判断をするべきところは判断をしていますが、長年「いぶき」をやってきたメンバーや、他のプロジェクトを経験してきたメンバーの能力をいかに最大限発揮してもらうか、というところに気を配りながら進めています。

―プロマネとして心がけていることを教えてください。

プロジェクトチームの一人一人が能力を最大限発揮してくれてはじめて仕事が回ります。その時々の体調とか、精神状態とか、仕事の山谷とかで、ある人に負荷が集中したりすることもあるので、部下のそういう精神面だとか健康面だとか仕事の負荷とかにできるだけ気をくばってプロジェクトを進めていくこともプロマネの仕事だと思っています。また、そのためには相談しやすい環境をつくることも大切かなと思っています。
また、私たちがやっていることは技術開発ですが、仮にお金や期日の制約を取り除いていいなら、色々なやり方ができます。でも実際は、技術面とお金とスケジュールとでバランスをとっていかないといけない。バランスの中で妥協すべきところは妥協する。ベストではないかもしれないけれど、許容できる実現解というのを常に見いだして、迅速に判断していかないといけない。そういうことも心がけていかなくてはならないと思います。

―プロマネとして、平林さんがやりがいを感じているのはどのようなところですか?

プロマネとしてのやりがいと言えるかどうかはわからないのですが、プロジェクトをやっていて、「人々の役に立てる仕事をしているんだ」と思えることがやりがいであり、充実感だと思っています。このGOSAT-2というプロジェクトに関していえば、温室効果ガスというのは、人類の存続に関わる重要な課題ですし、我々の将来の生活に直接、大きな影響を及ぼす大きな課題ですので、「その課題に貢献できる、価値の感じられる仕事をしている」こと自体に充実感ややりがいを感じています。

(取材日:2015年6月)

画像:温室効果ガス観測技術衛星2号(GOSAT-2)プロジェクトマネージャ 平林 毅(2)

プロフィール

画像:温室効果ガス観測技術衛星2号(GOSAT-2)プロジェクトマネージャ 平林 毅(3)

平林 毅(ひらばやし・たけし)

JAXA第一宇宙技術部門 GOSAT-2 プロジェクトマネージャ
ロケットの打上げ部門を経験した後、政府系の衛星開発プロジェクト、経営企画部門、準天頂衛星に係る衛星測位システム技術室長を経て、2014年4月より現職

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インタビュー一覧

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