ページの先頭です。
本文へジャンプする。
ここからサイト内共通メニューです。
サイト内共通メニューを読み飛ばす。
サイト内共通メニューここまで。
ここから本文です。

気候変動の状況とその要因となるものを
長期間、グローバルに観測するミッション

気候変動観測衛星 GCOM-C
プロジェクトマネージャ杢野 正明

画像:気候変動観測衛星ミッション「GCOM-C」

数十年後、数百年後の地球の状態を正しく予測し、対策を立てるためには、気候に影響を及ぼす可能性のある物質と地球環境の長期の観測が不可欠です。GCOM(Global Change Observation Mission)は、先行する水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)と、気候変動観測衛星GCOM-Cの人工衛星を使って地球の状態をグローバルに観測するミッションです。

宇宙から観測することで見えてくる地球環境

―GCOM-Cミッションの目的を教えてください。

GCOM-Cは気候変動観測衛星という名前がついているように、地球の気候変動を長期に渡って観測する人工衛星です。期間の短い観測では、細かい変動の影響で、気候がどの方向にどのくらいのペースで変化しているのかわかりませんが、長期間観測することでやっと、気温上昇などの変化の方向性や割合が見えてきます。
地球の温暖化を予測するための気候数値モデルというものがあります。人間のいろいろな社会活動の影響をもとに、例えば西暦2100年の時点で、どれくらい平均気温が上昇するかといったことを予測するものなのですが、精度の良いモデルを作り上げるには、そこに入れる計測量がしっかりとしたものでないといけません。GCOM-Cは、気候変動に関わる様々なデータを宇宙から継続的に観測することを目的にした人工衛星です。

地球平均地上気温予測と温室効果ガスの排出シナリオ

―先に打ち上げられた「しずく(GCOM-W)」とはどのような関係になるのでしょうか?

地球環境変動観測ミッションGCOMは、GCOM-CとGCOM-Wの2種類の人工衛星から構成されていています。「しずく」は水循環変動観測衛星という名前で、マイクロ波放射計を使って降水量や水蒸気量、土壌の水分量、海面水温などを観測することで、地球上でどのような水・エネルギー循環が行なわれているのか解明する目的をもっています。一方、GCOM-Cは気候変動観測衛星という名前のとおり、温暖化などの気候変動を長期に渡って調査することを目的としています。「しずく」が水の循環を追う人工衛星だとしたら、こちらは大気・海洋・植生を含めた二酸化炭素の循環を追う人工衛星といえるかもしれません。この2つの人工衛星から得られる情報を使って、地球環境の変動状況を確認し、詳しく解明する事に貢献するのがGCOMプロジェクトの全体の目的となっています。

―二酸化炭素の循環とは、どういったことを指しているのでしょうか?

温室効果ガスである二酸化炭素には、地球を温める効果があります。化石燃料を燃やすなどして二酸化炭素が増えると、温暖化が促進されることがわかっていますが、その一方で、地上の植物や海面付近にある藻などには、二酸化炭素を吸収、固定してくれる能力があります。しかしながら、植物による二酸化炭素吸収量などは十分にはわかっていません。この部分には不確定要素がいろいろ残っているんですね。GCOM-Cの観測対象に、植生が入っているのは、この部分をより正確に把握するためです。

雲、エアロゾル、海色、植生、雪氷を調査

―GCOM-Cが観測する対象を詳しく教えてください。

GCOM-Cは、雲、エアロゾル(大気中のチリや微粒子)、海色、植生、雪氷などを観測します。雲やエアロゾルは地球の温暖化に影響すると考えられていますが、どのくらいの影響があるのかまだ十分にはわかっていません。GCOM-Cによってこの地球上の雲やエアロゾルの分布を観測することで、気候数値モデルの精度を上げていくことができると期待されています。
植生については先にも触れたように、地球上の分布を調べ、二酸化炭素の吸収量を推測することで、気候数値モデルの精度を上げて、地球温暖化の進み方をより正確に求めることができると考えられています。また、氷や雪は太陽の光を反射するため、温暖化を防ぐ効果をもちます。そのため、地球表面のどのくらいの面積が雪氷に覆われているのか数値として知ることがとても重要です。また、人間の活動によって出た煤煙などが氷に付着して黒く汚してしまうと、今度は逆に光を吸収して、温暖化をより進める要因にもなってしまいます。こうした点からも、雪氷域を観測することがとても重要になってくるわけです。

―海色の観測にはどのような意味があるのですか?

海色の観測で、海洋植物プランクトンの分布が分かり、このデータなどから海面の二酸化炭素の吸収量がわかるので、温暖化の予測に使用されます。またプランクトンは、魚のエサであり、GCOM-Cは海面水温も計測できますので、この2つのデータをもとに魚が集まる漁場を漁業者に伝えられると期待されています。信頼性の高い情報が伝えられるようになると、漁船はその漁場に直行できるようになり、船の燃料費が節約できて、より効率的な操業が可能になります。また、赤潮が発生した時にも、事前にその情報を伝えることで被害の防止に役立てる事も検討されています。これらは観測データの現業への利用という側面ですが、こうした利用事例もまた、GCOM-Cの幅広い可能性を示してくれています。

最新の観測センサ 多波長光学放射計を使った観測

―GCOM-Cは、どのような技術を使って観測するのでしょうか?

GCOM-Cには、「多波長光学放射計」(SGLI)という名の観測センサが搭載されます。このセンサは地上からの光を受け取るものなのですが、カメラのようにあらゆる波長の光を受け止めるのではなく、光のある狭い領域だけを測るものになっています。ただし、その領域は1つではありません。380nm~12μmという、近紫外線から可視光線、赤外線までの幅広い波長帯から選ばれた19の領域(チャンネル/バンド)を使います。この多波長光学放射計は、赤外走査放射計部(SGLI-IRS)と可視・近赤外走査放射計部(SGLI-VNR)という2つのユニットから構成されていますが、計測された情報はまとめて処理されます。

画像:代表的な観測対象物の反射率と大気の透過率。SGLIのチャンネル位置および幅を縦の水色で示している。黒丸は代表的なプロダクト導出において直接的に用いられるチャンネルを表している。

SGLIセンサのチャンネルと反応

―観測センサは地上のどれくらい細かいものを観測できるのですか?

GCOM-Cのセンサの分解能は、最高で250mです。光学の観測センサを搭載している人工衛星の場合、分解能10mとか高いものもあるのですが、これはそういう観測センサとは方向性を異にしています。GCOM-Cのセンサは、最大で1400kmという非常に広い観測幅をもち、およそ2日で地球全土をくまなく観測できますが、このような用途の地球観測衛星の中では世界最高水準の分解能と言えます。なお、GCOM-Cが周回する高度は798kmで、一般的な地球観測衛星と同じように、極から極に回る極軌道を選択しています。

画像:GCOM-Cの観測センサ 多波長光学放射計(SGLI)

GCOM-Cの観測装置

―798kmという軌道が選ばれたことには、どのような理由があるのですか?

JAXAが、2002年に打ち上げた環境観測技術衛星「みどり2号」(ADEOS-II)には、今回のGCOM-Cのセンサの前身となる観測センサのグローバルイメージャ(GLI)が搭載されていました。「みどり2号」で得られたデータの継続性を高めるという意味合いもあって、ほぼ同じ軌道になるように設定されました。

2016年度の打ち上げを目指して開発中

―GCOM-Cの開発状況はいかがでしょうか?

衛星本体も観測センサも今、メーカーの工場などで試験が行なわれているところです。これが終わると組み立てられて、筑波宇宙センターで環境試験に入ります。打ち上げ時を想定した状態、形態にして、実際に飛翔中に受ける音響やロケットの振動に耐えられるかどうかをテストするほか、真空チャンバーの中で、熱や真空にさらされる宇宙空間と同じ条件で試験を繰り返していきます。2016年度の打ち上げに向けて、およそ1年にわたってきびしくテストされることになります。

―プロジェクトを進めるにあたって苦労したことを教えてください。

今回の人工衛星では、分解能を上げたり、偏光観測ができるようにしたり、多方向の観測ができるようにしたりするなど、観測センサに複数の機能を追加しています。これまでエアロゾルは海の上にあるものしか観測できなかったのですが、今回、近紫外領域のチャンネルに加えて、偏光観測を可能にすることで陸上でも測れるようにしたんです。観測センサは世界の最先端レベルいうこともあり、今までに経験のない問題も出てきて開発には本当に苦労しています。ただ、さまざまな難問が出てきたとしても、プロジェクトのスケジュールは決まっていますから、進行はそれにうまく合せていかなくてはならないわけです。開発ももちろんそうですが、多くの人が働いている現場で、作業全体のコントロールをするということは本当に難しいと感じています。

―プロマネを途中で引き継がれたと伺ったのですが、その際に苦労などはありましたか?

私がプロジェクトマネージャに就いたのは、「しずく」打上げ後の2013年の4月です。プロジェクトの中心がGCOM-Cへとシフトするタイミングで交代しました。とはいえ、2007年4月に「しずく」プロジェクトが立ち上がった時からずっとこの現場にいて、内容はよくわかっていましたし、プロマネになる前はサブマネージャでしたので、新たに何かが変わるとか、そういったことによる苦労はありませんでした。

プロジェクトは、縦にも横にも幅広いスケールをもった仕事!

―杢野プロマネがJAXAに入社されたきっかけを教えてください。

高校生くらいの時、テレビでロケットの打ち上げ中継を見て宇宙に少し興味をもったのですが、その時はまだ、「宇宙関係に進むぞ」という強い決意はありませんでした。きっかけは、大学院で未来の技術といわれた核融合関係の研究を進めながら、将来の仕事は、このような大きなプロジェクトに就きたいなと思ったことでしょうか。規模の大きなプロジェクトといえば国の機関だろうと漠然と思っていたところ、ふと手にした書類の中に宇宙開発事業団(NASDA ※JAXAの前身)の紹介が書かれたものがあったんですね。「あぁ、こういうところもあるんだ!」と思って入社を考えました。実はこれには余談があって、そこに書かれた電話番号に連絡したら、「ここ(筑波)では就職の受け付けはやっていません。東京の本社に連絡してください」といわれて、あらためて東京に電話して詳しい試験のことなどを聞いたという経緯があります。

画像:GCOM-Cプロジェクトマネージャ 杢野 正明(1)

―ある意味、すごい行動力ですね。その後、JAXAに入ってから記憶に残る仕事はありますか?

入社してから、ずっと人工衛星をやっていました。「しずく」の前は、光衛星間通信実験衛星「きらり」(OICETS)の仕事で、その前は技術試験衛星VII型「きく7号」(ETS-VII)でした。そのプロジェクトは長くて、10年くらいいたでしょうか。「きく7号」で携わったのが、無人自動ランデブー・ドッキングの実験システムです。これが非常に思い出深いですね。

―プロマネとして、仕事のどんなところにやりがい感じていらっしゃいますか?

この仕事は、構想段階から始まって、設計があって、ものを作って、完成して、打ち上げるというもので、変化がものすごく大きいんです。最初はなにもない白紙から始まったものが、最後は宇宙に打ち上がるわけですから。そのダイナミックさが非常におもしろいと感じています。そして、もうひとつ感じているのが、幅がとても広いということ。私はもともと電気が専門なのですが、現場で扱うものは電気だけでなくて、当然、機械もあり、構造や熱、更に化学もある。そんなふうに幅広いものを、しっかり理解しないといけないわけです。大変な分、おもしろいと思いますし、やりがいになっています。縦にも横にも幅が広い。そういうことの集合体がJAXAのプロジェクトなのです。あと、プロジェクトですので、上手くいく、いかないは如実に現れますよね。そこがまたおもしろいところでもあるかなと思います。

―プロマネの心がけとして、大事なことはどんなことだと思いますか?

プロジェクトに向かう私たちプロマネの仕事の7割から8割はコミュニケーションだと言われています。プロジェクト内のコミュニケーションは非常に重要なわけですが、加えて各部門との連係や、人工衛星を製造してもらっているメーカーの方々とのコミュニケーション、データを利用するユーザーの方々とのコミュニケーションもとても大事になってきます。だから、そういったいろいろなコミュニケーションを、いかにうまく、1つの目標に向けて、力をあわせて成功するように向かわせることが重要だと思います。加えて、「先を読む力」も大事です。先を予測して、変化にそなえて手を打つこと。それもプロマネに求められる資質だと思います。
あと1つ挙げるとすれば、人工衛星というのは打ち上げてしまうともう修理はできないものなので、開発中に問題が起きた時は、まだ地上にあるうちに、二度と起きないようにするために、その原因を徹底的に究明して、対処することが大事だと思っています。そうしないと、あとに禍根を残すことになりかねないですから。プロジェクトの進行については柔軟に対応することも求められますが、妥協しないでとことん追求し、つきつめることもとても大事だと考えています。

(取材日:2015年6月)

画像:GCOM-Cプロジェクトマネージャ 杢野 正明(2)

プロフィール

画像:GCOM-Cプロジェクトマネージャ 杢野 正明(3)

杢野正明(もくの・まさあき)

JAXA第一宇宙技術部門 GCOMプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ
技術試験衛星VII型「きく7号」(ETS-VII)、光衛星間通信実験衛星「きらり」(OICETS)等の開発に関わった後、GCOMプロジェクトへ。2013年4月より現職。

関連情報

インタビュー一覧

本文ここまで。
画像:ロケットの情報を掲載 ロケットナビゲーター
画像:宇宙から見た地球を紹介 地球観測研究センター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
ページTOP