熱帯林の減少

「地球の肺」であるアマゾンで、熱帯林の減少が急速に進行しています。アマゾンで何が起きたのでしょうか。衛星画像を見ながら考えてみましょう。

アマゾン熱帯林の衛星画像

上の図は地球観測衛星から撮影したブラジルのアマゾンの様子です。「ふよう」(JERS-1)が観測した1996年の画像と、「だいち2号」(ALOS-2)が観測した2020年の画像を比較すると、1996年から2020年にかけて広範囲にわたって森林伐採が進行している様子が分かります。

アマゾンは地球全体の熱帯林のほぼ半分を占め、生物多様性に富み、二酸化炭素を吸い込む量が多いことから「地球の肺」とも呼ばれています。
ブラジルでは、原生林を伐採して全長5,500kmに及ぶアマゾン横断道路が建設されました。農地を拓くために伐採が繰り返され、地味の無くなった土地は野焼きして牧場として開発されました。

ブラジルの大豆畑や牧場

アマゾン熱帯林の伐採地で特徴的なパターンとして、魚の骨のようになる「フィッシュボーン」の構造も衛星画像から捉えられています。熱帯林が道路沿いから消失し、その範囲が広がっている様子が分かります。

アマゾン熱帯林の衛星画像(フィッシュボーン)

衛星で撮りためた画像を比較することで、どのエリアで森林が減少しているかが分かります。JICAとJAXAは協力して違法伐採の監視を行っており、2023年1月時点でブラジルでは約150万カ所の森林減少を検知しています。

2022年にJAXA職員がJJ-FASTの活動として
現地調査を行った際に撮影した伐採地の様子
現地調査を行ったエリア
(黄色枠内)

ここでご紹介した衛星画像は、衛星からレーダを用いて森林の状況を観測して作成した、森林・非森林マップです。緑色は森林がある所、黄色は森林が無い所、青色は水がある所を表しています。「だいち」(ALOS)や「だいち2号」(ALOS-2)のデータから作成しています。(分類精度は2020年のもので86%以上)

■アマゾン熱帯林の減少から学べること

アマゾン熱帯林の減少により、地球温暖化の進行の可能性が高まっている他、多くの動植物が絶滅の危機に瀕しています。

アマゾンの森林伐採の原因の一つは、大豆や牛肉などの農産物の生産です。私たちがこれらを輸入することで、間接的に森林伐採を助長することになります。
そのため、環境に配慮した消費行動を推進することも重要です。
例えば、持続可能な農法で生産された農作物を選ぶこと、食品ロスを減らすことも重要です。

■発問例

1.1996年と2020年の画像を比べて、どのようなことに気付きましたか。
2.熱帯林の伐採が進行すると、どのような問題が起こるでしょうか。
3.どうして伐採が進行するのか、実際に伐採を行っている人の立場で考えてみましょう。
(ブラジルという国の課題を考えてみましょう。)
4.現在、世界で問題となっている地球観測問題には、どのようなものがありますか。
5.熱帯雨林と気候変動の関係について考えてみましょう。
6.世界では森林火災が増加しています。森林火災と気候変動の関係を考えてみよう。

■活用場面例(教科書 単元)

<中学>
地理 世界の諸地域(南アメリカ)
公民 私たちと国際社会(地球規模の環境問題と国際協力)
地図 世界の環境問題

<高校>
地理総合 国際理解と国際協力(地球的課題と国際協力)
地学 大気と海洋(人間活動と地球環境)
現代社会 地球環境問題

■教材サンプル

中学生・高校生向けの教材はこちら

・森林・非森林マップのデータをダウンロードしたい方はこちら
森林・非森林マップ
森林・非森林マップのサイトの操作方法はこちら

森林・非森林マップの衛星データを閲覧したい方はこちら
宇宙教育教材「JAXA オリジナル Google Earth Engine Apps 集
– 教室ですぐに見える!使える!衛星データ -」
コンテンツ③ 森林・非森林マップ(2007年と2017年を比較)

(1)森林が減少した部分を赤で表示、増加した部分を黄緑で表示
https://gakkoushien.users.earthengine.app/view/deforestationr1

(2)2つの地図を比較することで森林の増減を観察
(左に2007年、右に2017年が表示されています)
https://gakkoushien.users.earthengine.app/view/deforestationhikaku

タブレットでの表示画面例
タブレットの操作イメージ

■熱帯林の減少の衛星画像を見た感想の紹介 

  • 地球がかわいそう。(年中)
  • 木を切ったら植えてほしい。(小2)
  • 地球の大切な自然がどんどんなくなってしまっていて、対策をした方が良い。(小4)
  • 熱帯林が減っていてびっくりした。自然が壊れてきている。(小5)
  • 今のままではいけないと強く感じた。(20-30代)

<観測を行っている衛星>
「だいち2号」(ALOS-2/PALSAR-2)
打上げ年月日   2014年5月24日
災害状況の把握、森林分布の把握や地殻変動の解析などで活用されています。Lバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)は、衛星から地表に向けて電波を照射して、その反射された電波を受信 して観測を行います。光学画像と異なり雲や雨を透過できるため、雲の多い熱帯林でもいつでも観測ができるという利点があります。

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