2021.12.06(月)

くっきー!、地球観測衛星とSDGsを語る

スペシャル座談会

くっきー!さん

【WEBサイトリニューアル記念】スペシャル座談会

野性爆弾くっきー!&タケト × JAXA 第一宇宙技術部門 【第2部】

第1部で人工衛星の基礎知識を学んだ、くっきー!さんとタケトさん。ここからは人工衛星による地球観測が、地球や我々の未来にどのように役立つのか、JAXA第一宇宙技術部門のスタッフとともに大いに語り合ってもらいました。
お2人とお話するのは、地球観測衛星にかかる国際協力を推進する衛星利用運用センター主任の原田まり子と研究開発員の濱本昂です。

(取材日:2021年10月6日)

温室効果ガスの長期間データは、世界で役立つ貴重な財産

第1部では人工衛星の概要についてご紹介させていただきましたが、ここからは人工衛星がどのように使われているかをお話させていただきたいと思います。ここでおさらいの意味も込めて、簡単なクイズを出したいと思います。

いいですね。

先ほどの見学は興味津々で聞いていたので、全情報が入ってますよ。申し訳ないが、はずれるはずがない。

では、第1問です。

【第1問】地球観測衛星でわかるものは?

  • ①銀杏の実
  • ②サンマの群れ
  • ③牛のゲップ

これは「銀杏の実」でしょ。銀杏の実が落ちると、いっぱい人が拾いに集まる。そしたら、そこに熱が発生するから。

熱を持つくらい、夢中で拾いますか?(笑)

大阪の御堂筋のイチョウ並木なんて、ぎょうさんの人が夢中で銀杏拾うてますよ。だから、その時期の御堂筋はすごく暑い。

一同:(笑)

オレ、当てちゃいますよ。知ってるんですよ、「牛のゲップ」ですよね。昔、テレビで観ました。牛のゲップからメタンガスが出て温暖化になるというので、松村邦洋さんが牛の口から直にゲップを吸うっていうのをやってた。

タケトさん、正解です!(拍手)

ちょっと待て。何なん、おまえ。東大王、目指しとるんか。

タケトさんのおっしゃる通りで、牛のゲップはメタンガスがたくさん含まれていて、大気中にどんどん溜まっていってしまうんですよ。諸説あるんですが、空気中に存在するメタンガスの2〜3割は牛やヤギなどの反すう動物が出したものともいわれています。

草食動物が出してるんですか?

そうです。草を食べて、胃のなかでメタンガスが発生して出てくる。メタンは温室効果ガスのひとつで、二酸化炭素(CO2)の次に温暖化に影響を与えているとされています。「いぶき」という世界初の温室効果ガス専用の人工衛星がありまして、これでメタンや二酸化炭素といった温室効果ガスを測定しています。
こちらをご覧いただきたいんですけれども、これは2009年から世界中のCO2の濃度を計測してわかりやすく色付けして並べたものです。

ほぉー

見ていただいてわかるように、だんだん色が青から緑、オレンジになっていっていますが、これは温室効果ガスがどんどん増えているということなんです。それが衛星データで見えてくる。

なるほど

なぜこういうデータが必要なのかというと、最近、気候変動という言葉をよく耳にすると思うんですけれども、気候変動を予測する際に、今の状態がどうなっているのかを知ることが重要なんですね。そこで、気候変動に大きく関わるCO2やメタンなどの温室効果ガスがどのように増えているかを知るために、このデータはさまざまなところで気候変動の研究に使われています。

これを見ると、確実に増えていってますもんね。

年ごとにバラつきはありますけど、だんだん増えていってるというのは色のグラデーションでおわかりいただけると思います。

4月〜6月は他の月と色が少し違いますが、なんか理由があるんですか?

鋭いですね。植物は光合成でCO2を吸って酸素を吐くわけですけど、地球は北半球のほうが緑が多いんですね。なので、北半球で植物が増える時期は、CO2が多く吸収されるからといわれています。あくまでひとつの説ですけど。

夏に向けて木々が活性化しとるから、そうなるんや。

逆に冬場は人間が暖房を使うので、そのぶん温室効果ガスの濃度が高くなっています。

ここ10年くらいで大きく温室効果ガスが増えているのがわかりますね。

産業革命以降、石油を燃やすようになってから、温室効果ガスはずっと増え続けていて、ここ10年でさらに加速しています。

今回(2021年)ノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎教授は、CO2は地球を暖める効果があるということを明らかにされましたが、今後、こうした我々のデータが科学的根拠として世界中で使われていくのではないかと思っています。しかも、これは日本しか持っていないデータですからね。

日本だけですか! そんな貴重なものを簡単にオモテに出していいんですか?

(笑)これは広く公開しているデータですので。

逆に、みんなに知ってもらいたいということですね。

はい。ぜひ世界中の方々に活用していただきたいです。

でも、なんで日本だけが注目していたんですか?

とても良いご質問ですね(笑)。気候変動や温暖化を調べるには地球から離れて、宇宙から観測するのが大事だろうという先見の明があったんですね。実は同時期にアメリカも開発を行っていたのですが、残念ながら打ち上げに失敗してしまって。それで温室効果ガスの専用衛星としては日本が一番の先駆けということになりました。

いろんなことを考えてんだね、日本って。

はい。地球全体のことを考えています。

日本に生まれて良かったー(笑)。

災害時に役立つデータを観測し、専門機関に提供

では、もう一問、よろしいですか?

【第2問】地球観測衛星で透視できるのは?

  • ①入道雲
  • ②家の屋根
  • ③マリアナ海溝

透視? 透けて見えるってことでしょ。

②の「家の屋根」はダメでしょう。

家に帰ったら、何にも着てないですから、ボク。それを透視されたら、かなわんなぁ(笑)。

大事なところを見られちゃいますね・・・って、服を着なさいよ(笑)。

これは消去法やな。「入道雲」もないと思うんですよ。アニメ映画でそんなようなシーンを観たから。

ヒントはアニメかい。だとすると、③の「マリアナ海溝」ですか? これが正解なら、いちばん驚くけどな。海の底まで見えるのかって。

正解は①の「入道雲」でした。「だいち」という人工衛星はいわゆる写真である可視画像を撮るためのセンサのほかに、レーダーのセンサを持っているんですね。レーダーは電波を発信し、対象物に当たって跳ね返ってきた電波を受信して、その様子を知るというもので、それを使えば、雲を透過して地表を見ることができます。

残念。はずれました。

ちなみにマリアナ海溝はさすがに無理ですが、我々の肉眼で見えるくらいの海底であれば、人工衛星で海の深さを測ることは技術的には可能です。ただ完全に透過できるということでいえば、入道雲ですね。

雲を透過できることが、どういうときに役立つんですか?

いちばんは自然災害時ですね。大雨や台風のときの空は曇っているので、写真、可視画像では見にくいんですよね。
こちらは2020年7月の熊本で起きた豪雨の様子を捉えたものなんですけれども、曇っているなかでも、「だいち2号」のレーダーを使って、浸水がどこに広がっているかを検出することができました。

これが役に立つんですね?

たとえば、どこにレスキュー隊や排水ポンプを送ったらいいかとか、避難経路はどうしたらいいかなどの情報を自治体や防災関係機関に提供しています。

逆に、地中に水があるかどうかみたいなことはわからないのですか?

おーっ! 素晴らしい質問です。

いろいろ見る方法はあります。SARというレーダーを使えば、地表面の水分量、
浅いところですけれど、その水分量を計測することは技術的には可能です。

宇宙から地中の水の量がわかるんだったら、水に困ってる国ってあるやないですか。そこに教えてあげたら。

残念ながら、地中の深いところは見ることはできないので。ただ地下水が増えているか、減っているかというのは、日本の衛星じゃないんですが、アメリカが持っているような重力の変化を測る衛星で計測することができますね。
もうひとつ、災害の画像なのですが・・・

火山?

カリブ海のセントビンセント島のスフリエール火山という今年噴火した火山です。この画像は、「だいち2号」のレーダーが14日間間隔で捉え続けたものです。このときも噴煙がかなり上がっていたので、可視画像ではなかなか様子がわからないんですけれども、レーダーで捉えると、山が膨らんでいっている様子がわかります。

山自体が膨らんでいるんですか?

山がどんどん膨張していって、ついに爆発して、火口の形が変わってしまった。

面白いなぁ。

山が膨らんでいるのを発見したら、煙が上がってなくても、「噴火しますよー」って教えてあげられますね。

そうです、そうです。くっきー!さん、すごいですね。鋭いです(笑)。

ほんまですか? 地球のことをいつもいっぱい考えてるからかなぁ。

一同:(笑)

ちなみに日本でも、少し前に箱根の噴火がありましたよね。そのときも「だいち2号」で山の様子を観測して高精度に火山表面の膨張を計測し、警戒レベルの発令などの参考情報として使っていただきました。

めちゃめちゃ役立ってますね。山がこれだけ膨らんでいたら、これくらいの火が出るというのはわかるんですか?

いえ。我々だけでそこまではカバーできないので、火山の専門家と連携して一緒に研究するという形になりますね。それは火山に限らず、いろんな分野で取り組んでいます。

火山の専門家に衛星からの画像は撮れないですもんね。

はい。ですので、我々がデータをお渡しして。場合によっては使いやすいように加工してお渡しすることで研究に活用していただいています。

じゃあ、いろんな分野の専門家と連携しているんですね。

地球観測衛星が貢献できる、SDGsの開発目標とは

次にSDGsのお話をさせていただきたいのですが、JAXAの地球観測衛星はSDGsが掲げる17の目標にどれだけ貢献しているのか、それをお2人で相談して当てていただきたいと思うのですが・・・。

はいはい。

我々、吉本興業もSDGsには力を入れていますからね。SDGsの17の開発目標からひとつ選んでネタをつくって披露する「SDGs-1グランプリ」も開催しているので、意外にボクらは詳しいですよ。

つねに意識してますからね、SDGsは。じゃあ、タケトと相談して。

(相談中)

できました! 17のうち、JAXAさんの地球観測衛星が貢献しているのはズバリ8つです。1、2、6、11、13、14、15、17です。

ありがとうございます。すごいですね、ほとんど当たってます。

3番だけですね。残念ながら○を付けていただけなかったのは。

「すべての人に健康と福祉を」ですか?

これはJAXAで貢献できると思っているんです。たとえば、大気汚染が原因で亡くなったり、健康を害してしまったりする方は意外と多いんですね。

PM2.5みたいなヤツですか?

そうです。あとは黄砂とか。地球観測衛星から大気がどれくらい汚染されているのかを確認できるので、そうした情報をできるだけ早くお伝えすることで、みなさんが外に出ないようにするなど、自分の身を自分で守る行動ができる。これは健康への貢献につながると思います。

なるほどね。でも、ボクら、いい線いってましたね。

はい、お見事です。では、今の大気汚染の話もそうですが、JAXAの地球観測衛星が具体的にどのような貢献ができているか、少しご紹介させていただきたいと思います。

お願いします。

たとえば、JICA(独立行政法人 国際協力機構)さんと一緒に世界77カ国の熱帯雨林の森林変化を観測するという取り組みを行っていまして、1.5ヵ月に一回観測し、その変化をWEBサイトから無償でご覧いただけるようになっています。

JICAとの森林観測ウェブサイト
「JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム」(JICA-JAXA Forest Early Warning System in the Tropics: JJ-FAST)

変化ってどういう変化がわかるんですか?

たとえば、木が無くなったという変化ですね。それが伐採によるものなのか、枯れてしまったのか、違法の伐採なのかはわかりませんが、この情報をもとに地元の警察などが現場に飛んで、違法伐採する人を逮捕したり。そういうことに使われています。

なるほど。

たとえば、ブラジルの熱帯雨林はずっと雨が降っていたり、雲がかかっていたりするので、レーダーの衛星でないと見えないんです。違法伐採する人が「今日は雲がかかっているからバレないだろう」と思っても、衛星からはしっかり見えている。

雲を通して見えるというのはでかいですね。

このサイトを見ると、いろんなところで森林変化が起きていることがわかります。世界で失われる森林の面積はかなりの大きさになりますので、それをどれだけ守っていけるかは人類の課題だと思います。アマゾンなど熱帯雨林の奥地に行くことはなかなかできませんので、最先端の技術を使って、宇宙から見た情報をお伝えしているというわけです。

これはボクのパソコンでも見れるんですか?

はい、普通にインターネット上で見ることができます。

ちなみにこの取り組みはSDGsでいうと、15番ですかね。

13番とか15番に当たりますね。あと、11番の「住み続けられるまちづくりを」であれば、都市部を襲う台風や大雨などを衛星から観測できますので、これを見て避難してもらったり。また、レーダーを持っていない国に、こうした天候の情報を提供するなどの取り組みも行っています。

他の国にも情報提供してるんや。それはいいですね。

私利私欲がやがて地球のみんなを笑顔にする!?

今日はいろいろとJAXAの地球観測衛星を使った取り組みをご紹介させていただきましたが、いかがでしたか?

おかげさまで地球観測衛星がとても身近に感じられるようになりましたね。
ボクね、SDGsの18番目に「俯瞰で見よう」というのを入れたいですね。地球観測衛星を見習って、自分のことも俯瞰で見ることで、いろいろわかることがあると思うんですよ。

なるほど、いいですね。

ボクはね、天災ってこわいですけど、衛星が見守ってくれてるという安心感が生まれましたよ。「JAXA、ありがとう」って言いたい(笑)。

ありがとうございます。我々なかなか褒めてもらえないので、うれしいです。

そうなんですか? 素晴らしい仕事じゃないですか。

実はいろいろジレンマもありまして。たとえば、NASAとか欧州の宇宙機関とか、
みんなで一緒にやっていこうという雰囲気がありながらも、でもやっぱり自分たちのやっていることがいちばんだという信念を持っていますので、そこのせめぎ合いが国際的には難しい。

でも、ウチがウチがってせめぎ合うことで、より良いものが生まれたりするんじゃないですか。

ホント、おっしゃる通りで、お互いに切磋琢磨しながらやっていくわけですけれども、それが良いことでもあり、ツライところでもあるかなと。

宇宙にふれながら地球を守るなんて、究極的に素敵な仕事なんですから、自信を持って労働に励んでください。で、疲れたり、へこんだりしたら、タバコ吸って、パチンコ行って。ボクらは応援してますよ。

せっかくなので、お聞きしたいんですけど。くっきー!さんはお笑いだけでなく、アートとか音楽とか多方面で活躍されてますけど、何か共通する軸になる考え方などはあるんですか? 

あります、あります。ボクがお笑いやいろんなことをなぜやっているかというと、私利私欲のため。

一同:爆笑

その私利私欲って何かというと、自分がうれしいということなんですよね。要は、自分が笑顔になるために働いている。で、その笑顔で誰が喜ぶかといったら、家族。で、家族が笑うと、家族の友達が笑う。その友達が笑うと、その友達も笑う。そして、気がついたら、地球みんなが笑ってる。だから、ボクはつねに私利私欲のため。地球を笑顔にするために私利私欲でいかせてもろうてます(笑)。

意外に深い話だった(笑)。

やっぱり自分の好きなことをやるっていうのは原動力になりますよね。JAXAのなかにはいろんな人がいますけど、やっぱりみんな宇宙が好きで、宇宙のことを知りたい、やりたいと思ってて、それが引いてはSDGsなどの未来に貢献できるというのは、我々としてもうれしいですし、やりがいも感じるかなと。今のくっきー!さんのお話を聞いて思いました。

好きだから、JAXAにいるんだもんね。

でも、なかなか我々の取り組みは広く知ってもらえないところがあって。今日お2人に来ていただいたのも、それをなんとかしたいという想いがあって。

くっきー!さんは宇宙好きですから。ネタのなかで「宇宙、宇宙」って言ってるくらいですからね。

じゃあ、これからは「宇宙」の代わりに「JAXA、JAXA」って言いますわ。ほうぼうでアピールしますよ。

一同:おーっ(拍手)

すごくうれしいです。

今日はありがとうございました。

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