地球を見る衛星(地球観測分野)
全球降水観測計画/二周波降水レーダ
「GPM/DPR」

ミッション
雨雲を、味方にせよ。
GPM主衛星は日米を中心にした国際協力の下で進められている全球降水観測計画(GPM計画)の軸になる人工衛星で、世界中の雨や雪を観測します。 NASAが開発した衛星本体に、日本が開発を担当した観測装置の二周波降水レーダ(DPR)とNASAが開発した観測装置のGPMマイクロ波放射計(GMI)を搭載しています。なお、DPRは、日本電気株式会社が設計・製造を担当しました。
二周波降水レーダ(DPR)による降水の3D分布図
GPM計画のイメージ
(各国のマイクロ波放射計を搭載した
人工衛星の降水データを組み合わせる)
GPM計画は、日米共同開発のGPM主衛星と、マイクロ波放射計を搭載した世界各国の衛星群によって、全球の降水の、高精度・高頻度観測を目的にする国際協力ミッションです。
GPM計画のプロダクトである衛星全球降水マップ(GSMaP)はJAXAのHPで公開されており、世界中の降水を準リアルタイム(4時間遅れの1時間毎更新)で見ることができます。
GPM/DPRの形状や搭載パーツについて
二周波降水レーダ(DPR)
Ka帯とKu帯という2種類の周波数の電波を雨や雪に照射して、降水の分布を立体的に観測します。日本が開発を担当しました。
太陽電池パドル
軌道上において太陽光を電池エネルギーに変換し、衛星に必要となる電力を供給します。
マイクロ波放射計(GMI)
雨粒から常に放射されているマイクロ波を感知して、雨の強さを測ります。NASAが開発を担当しました。
DPRの観測イメージ
GMIの観測イメージ
技術
GPM/DPRで使われている技術のここがスゴイ!
二周波降水レーダ(DPR)
GPM主衛星に搭載されている二周波降水レーダDPR(Dual-frequency Precipitation Radar)は、 地球に向かって電波を飛ばし、雨粒や雪から反射した電波を受け取ることで、雨雲の中の降水を立体的に観測できます。 DPRは弱い雨や雪の検出が得意なKa帯レーダ(KaPR)と強い雨の検出が得意なKu帯レーダ(KuPR)の2台の降水レーダで構成されていて、 それらを同時に使うことによって、弱い雨から強い雨まで、世界中の降水をくまなく観測できます。
GPM主衛星の機体
(手前側の2つの四角い部分がDPR)
DPRの観測イメージ
GPMマイクロ波放射計(GMI)
GPM主衛星にDPRと対になって搭載されているGPMマイクロ波放射計(GMI)は、NASAが開発を担当しています。GMIの主な役割は、 DPRと同時観測を行うことによって降水・降雪の推定精度を向上するとともに、GPM主衛星による高精度観測と、副衛星群搭載の各マイクロ波放射計による高頻度観測との間を橋渡しすることにあります。
水を観測する重要性・何故GPMを推進するのか

雨や雪は、降る地域や量、時期が少し変わるだけでも社会生活基盤を脅かしますが、近年では雨の降り方そのものが、これまでの経験からは想定できないものになりつつあります。2011年のタイの大洪水は、現地の人々の生活を脅かしただけでなく、日本を含む各国の企業の向上に多大な被害をもたらし、経済的な損失を与えました。被害を軽減し、変動する地球環境に適応するためには、地球全体の雨や雪を調べることが重要です。

人間は飲み水などの生活用水として、農業・工業用水として、発電などで、実に多くの用途で水を資源として活用しています。世界の水の総量をグラフで表したものが以下「世界の淡水資源」で、人間が普段生活に利用している湖や河川の淡水は、0.3%とほんのわずかな量にたよっています。

また、水は川として海に流れ込んだものが蒸発し雲となり雨となるその過程で熱を運びます。各地の気候はこれらの水の移動、降雨・降雪や対流、熱の移動によって決定づけられています。
そこで、水資源の管理や水の循環のメカニズム解明、集中豪雨などの災害につながる情報把握といった意味合いで、地球上のどこで降水・降雪があるかリアルタイムに近い形で把握しておくことが非常に重要になっているのです。
エルニーニョに伴う降水域の移動、気候変動への影響を把握する
(左: 通常の大気状態 / 右: エルニーニョ現象)
熱帯の対流活動は、地球全体の大気に大きな影響を及ぼしています。その対流の状態が少し変わっただけで、中・高緯度も含めた世界各地で通常とは違った特徴的な天候が発生する原因となります。
赤道近くのペルー沖海域の温度があがる「エルニーニョ現象」では、東風が弱まり多くの雨を降らせる雲の位置が東へと移動してしまい、熱波や干ばつにつながります。逆の「ラニーニャ現象」では、東風が強まりインドネシアなど海上で積乱雲が発達して大雨となります。

このような現象は、干ばつ、洪水、異常高温・低温など、世界各地の異常気象との関連が指摘されており、各国の社会活動、 経済活動に大きな影響を与えています。降雨を継続的によりリアルタイムに近くモニタすることで、こうした気候変動の影響をよりよく把握することができます。
災害に備える

下の図は、GPMデータを使った洪水警報システム(グローバル・フラッド・アラート・システム)予想図です。
例えば、メコン川の谷地域の中に激しい降雨があれば、私たちはGPMの3時間降水マップからの蓄積されたデータより、降雨を監視することができます。
その後、蓄積された降雨が洪水警戒の基準(例えば、100mm/day)を超過する場合、このシステムは赤や黄色のマークで洪水警戒情報を与えることができます。
仕様
GPM/DPRの仕様・打上げ
軌道 | 太陽非同期 |
---|---|
軌道傾斜角 | 約65度 |
高度 | 約400km |
観測機器 | 二周波降水レーダ(DPR) Ku帯レーダ(KuPR)観測幅 245km Ka帯レーダ(KaPR)観測幅 125km マイクロ波放射計(GMI) |
水平分解能 | 5km |
距離分解能 | 250m |
設計寿命 | 3年2ヶ月 |
打上げ年月日 | 2014年2月28日 |
打上げロケット | H-IIAロケット23号機 |