地球を見る衛星(地球観測分野)
温室効果ガス観測技術衛星2号
「いぶき2号」(GOSAT-2)
プライムメーカ:三菱電機株式会社

ミッション
「いぶき2号」(GOSAT-2)は、JAXAと環境省(MOE)、国立環境研究所(NIES)の3機関による共同プロジェクトで、2009年に打上げた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の後継機です。
三菱電機株式会社がプライムメーカーとして衛星と搭載センサを担当しました。
「いぶき2号」は「いぶき」ミッションを引き継ぎ、より高性能な観測センサを搭載して、さらなる温室効果ガスの観測精度向上を目指し、
環境行政に観測データを提供するとともに、温暖化防止に向けた国際的な取り組みに貢献するため、2018年10月29日に打ち上げられました。
世界が認めた! 宇宙からの温室効果ガスのモニタリング
1997年の京都議定書により先進国における温室効果ガスの削減義務が課せられ、温室効果ガスの排出量や森林による吸収量について報告することになっています。
地上での温室効果ガスの直接観測は、観測点が限定的でデータが得られない地帯も多く、また精度は高いものの観測点のごく近くの情報しか捉えられないという限界がありましたが、
衛星は大気の外側から全球を網羅的に観測し、排出源から大気中へ拡散する温室効果ガスの全体像を捉えることを可能にしました。
「いぶき」の10年に渡る成果により、宇宙からの温室効果ガス観測の有効性が国際的に認知され、2019年5月京都で開かれた国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会において許諾された排出・吸収量インベントリ算定に係るガイドラインの改良において、
世界各国の排出量報告の精度向上に衛星データの活用が有効であることが初めて記載されました。
「いぶき2号」のここがスゴイ!
「いぶき」「いぶき2号」は世界最高分光分解能を有する分光計を搭載し、太陽光の地表面での反射光の大気による吸収と大気からの熱放射光を同時に宇宙から観測することができる世界唯一の衛星です。
この特徴を活かして、主たる温室効果ガスである二酸化炭素・メタンについて対流圏上部と下部の濃度の地域差・季節変動・年変化をとらえています。「いぶき2号」は「いぶき」から観測精度を向上させただけでなく、
温室効果ガスの吸収・排出量をより的確に把握するため、観測したい対象エリアにあわせて地上観測ポイントを設定できる機能を備えています。
これにより、発電所や大都市、石油・天然ガス田・ごみ処理場・畜産など人為起源の大規模排出源を精度よく観測します。
また、「いぶき2号」は「いぶき」では観測していなかった燃焼とともに発生する「一酸化炭素」を新たに観測対象に加え、二酸化炭素の発生源の把握による環境行政への貢献を目指します。
「いぶき2号」(GOSAT-2) の形状や搭載パーツについて
温室効果ガス観測センサ2型(TANSO-FTS-2)(タンソ-エフティーエス-ツー)
「いぶき2号」(GOSAT-2)に搭載している、温室効果ガス観測センサ2型(TANSO-FTS-2)は、短波長赤外から熱赤外波長の光に感度を持つフーリエ干渉型分光計で、 二酸化炭素やメタン等の温室効果ガスの観測を行います。「いぶき」から観測可能な波長帯が増強され、新たに一酸化炭素を観測できるようになりました。 また自動的に雲がある領域を避けて観測する「インテリジェントポインティング機能」が加わり、効率的なデータ収集が可能になりました。
雲・エアロソルセンサ2型(TANSO-CAI-2)(タンソ-カイツー)
雲・エアロソルセンサ2型(TANSO-CAI-2)は、紫外波長から近赤外波長の光に感度を持つマルチバンドイメージャで、雲やエアロソルの観測を行います。 雲があると、TANSO-FTS-2が観測する温室効果ガスデータに誤差が生じるため、TANSO-CAI-2の観測データを用いて雲の有無を識別します。 また、近年健康被害が懸念されているPM2.5や、黒色炭素量(煤)のモニタリングへの貢献も期待されています。
仕様
「いぶき2号」(GOSAT-2) の仕様・打上げ
項目 | GOSAT-2(いぶき2号) | GOSAT(いぶき) | |
---|---|---|---|
ミッション機器 | 温室効果ガス観測センサ2型(TANSO-FTS-2) 雲・エアロソルセンサ2型(TANSO-CAI-2) |
温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS) 雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI) |
|
衛星 | 寸法 (パドル展開時) |
5.8m(X)× 2.0m(Y)× 2.1m(Z) (16.5m(Y)) |
2.4m(X)× 2.6m(Y)× 3.7m(Z) (13.7m(Y)) |
質量 | 1,800kg | 1,750kg | |
発生電力(EOL) | 5,000W | 3,770W | |
設計寿命 | 5年 | 5年 | |
運用軌道 | 軌道種別 | 太陽同期準回帰軌道 | 太陽同期準回帰軌道 |
軌道高度 | 613km | 666km | |
降交点通過 地方太陽時 |
13時00分±15分 | 13時00分±15分 | |
回帰日数 | 6日 | 3日 | |
打上げ年月日 | 2018年10月29日 | 2009年1月23日 | |
打上げロケット | H-IIAロケット40号機 | H-IIAロケット15号機 |