きらり(OICETS) 画像

運用が終了した衛星

運用終了

きらり(OICETS)

光衛星間通信実験衛星

ミッション

レーザー光による通信実験を行う

「きらり」は、数万kmを隔てた衛星と衛星の間で、レーザー光を使った光通信実験を行うための技術試験衛星です。 光通信は、原理的に電波を使用した通信よりも大容量の通信を行うことができ、また非常に絞ったビームを使用するため、干渉が起きる可能性が少ないという利点があります。 「きらり」は、将来の宇宙活動において重要となるこの光衛星間通信に関し、欧州宇宙機関(ESA)との国際協力によりESAのARTEMIS静止衛星との間で、レーザー光による通信実験を行うことを目的としています。


「きらり」は、2005年8月24日にバイコヌール宇宙基地からドニエプルロケットにより打ち上げられ、世界で初めて双方向の光衛星間通信や低軌道周回衛星と光地上局を結ぶ通信の実験に成功するなど、光宇宙通信に関する多くの成果をあげました。 「きらり」は、当初予定されていた運用期間を大幅に上回る4年を超える運用を行い、2009年9月24日14時48分に停波作業を実施して、その運用を終えました。

宇宙空間における双方向通信の可能性を探る

光通信は大容量のデータを高速でやりとりできる技術として、地上での私たちの生活に普及しています。 宇宙空間においては地上よりもさらに多くのメリットがあり、人工衛星や宇宙ステーションとの有効な通信手段として注目を浴びました。
・光(レーザー)は電波に比べて干渉が少ない
・レンズの精度を上げていけば、機器の小型化が可能
・通信の大容量化と機器の小型化が両立出来る
・真空の宇宙空間では遮るものが何もないのでケーブルが不要 等々

地球観測衛星からのグローバルなデータの取得に役立つ

地表をくまなく観測する地球観測衛星は低軌道を高速(高度約700kmで秒速約7.5km)で周回するために、地上との通信が難しいことが問題でした。 「きらり」の双方向光通信の実証により、低い軌道の衛星から高い軌道にある静止衛星へとデータを高速でリレーすることの実現性が示されました。 今後ますます大容量化する観測データを衛星間で高速中継するための技術の習得、また、衛星からすばやく地上へとデータを送り届けるための学術的なデータを取得し、光通信の実現性・可能性を示す成果を得ました。

宇宙での高速データ通信ネットワークに役立つ

将来にわたり、人工衛星や宇宙ステーションによる宇宙での活動がより活発になると、衛星間のデータ通信も頻繁になっていきます。 光双方向通信による複数の衛星間ネットワークが完成すると、惑星探査機や地球観測衛星、通信衛星、宇宙ステーションや月面基地などの間で、高速で安定したデータ通信が実現します。 「きらり」の宇宙における光通信実証には、とても大きな意義があるのです。

「きらり」の形状や搭載パーツについて

①LUCE:光衛星間通信機器光学部
レーザー光を送受信するための光学系ユニットです。

②太陽電池パドル
軌道上において太陽光を電気エネルギーに変換し、衛星に必要となる電力を供給します。

LUCE光衛星間通信(機器:Laser Utilizing Communications Equipment)

「きらり」に搭載されているミッション機器は光衛星間通信機器(LUCE)と微小振動測定装置です。LUCEは衛星の反地球面に搭載した光学部と衛星内部に搭載した電子回路部に分けられます。 光学部は2軸ジンバル、高利得光アンテナ、内部光学部から構成され、内部光学部には高出力半導体レーザー、高感度信号検出器等の光学素子が搭載されています。 このシステムでは通信開始時に通信回線の確立のため相手衛星からの入力レーザー光を所定の精度で捉える「捕捉」、 通信回線の維持のための1マイクロラジアン以内の精度で入力レーザー光を受信する「追尾」及びレーザー光をその到達時点での相手衛星の位置に向け正確に送信する「指向」等の技術開発を目指しました。 また微小振動測定装置を用いて、衛星に搭載されている各種駆動機器の振動が光衛星間通信実験に及ぼす影響を検討しています。
「きらり」の衛星バスは、小型軽量衛星バス技術の確立を目指して、高度な性能を有した三軸姿勢制御方式、水素吸蔵型ニッケル水素電池等の技術を採用して開発を進めました。

さまざまな開発試験

光衛星間通信に用いられるレーザー光のビーム広がり角は、数マイクロラジア(約1万分の1度)程度で、1kmで数ミリメートル広がるだけです。 このようなレーザー光を用いた通信機器の開発、性能評価のため様々な開発試験が行われます。そしてこれらの試験の実施にあたっては地上試験設備が重要な要素になります。
LUCEの開発では、ARTEMISに搭載された光衛星間通信機器の試験に使用された装置と同じ設計に基づいたシステム光学特性試験装置を整備し、LUCEのファーフィールドパターン、波面精度、 偏波等の特性を測定し、両者のインタフェースを確認しました。この試験装置は、大気中および宇宙空間を模擬した真空チャンバ内においてLUCEの光学特性を測定することが可能です。 また外部からの振動の影響を除くため空気バネで浮かせた定盤を試験室に設置し、光学機器を保護するために半導体工場並みのクリーン度を維持する等、試験環境にも細心の注意を払っています。
さらに衛星に搭載した太陽電池パドル等の駆動機器から発生する振動が、LUCEの捕捉追尾性能に及ぼす影響を評価するための試験を実施しました。 この試験ではLUCEオービタルモデル(OM)を「きらり」構造モデルに搭載して、外乱を防ぐために衛星を吊り下げた状態で、各種駆動機器を動作させLUCEの捕捉追尾機能を測定しました。

光通信捕捉シーケンス

(1) ARTEMISは通信光よりもビーム幅の広いビーコンを照射しながら、「きらり」が存在すると予測される領域をスキャンします。「きらり」はARTEMISが存在すると予測される方向を向き、このビーコンを待ち受けます。

(2) 「きらり」はARTEMISからのビーコンを検出後、直ちにARTEMISに向け通信光を照射します。

(3) ARTEMISは「きらり」からの通信光の検出後、ビーコンのスキャンを停止します。その後、「きらり」に向け通信光の照射を開始し、ビーコンの照射を停止します。「きらり」はARTEMISからの通信光を受信します。

(4) 光衛星間通信の開始のために、各衛星は互いに通信光を継続的に照射しながら、相手衛星への指向精度を向上させます。

技術

  • 針の穴を通すほどの光の正確なコントロール
  • 傍受されない光通信

「きらり」で使われている技術「ココがすごい!」

超正確なレーザー!針の穴を通すほどのコントロールがスゴイ!

「きらり」が試みる人工衛星間通信の距離は最大で4km以上も離れている上、それぞれが別の軌道をすごいスピードで動いています。 そんな人工衛星同士がレーザー光によってデータをやり取りするというのは、たとえば東京駅から富士山の頂上の針の穴を狙うくらい高度な技術なのです。 本格的な宇宙時代に向けた基盤技術を育てるために、「きらり」は光の正確なコントロール技術を実証しました。
遠距離で互いに移動している人工衛星同士がレーザー光によって送受信するということは、東京駅から富士山の頂上の針の穴を狙うくらい高度な技術です。

セキュリティもバッチリ!傍受されない光通信がスゴイ!

人工衛星同士で機密情報を扱う場合、通信時のセキュリティ対策も大事です。光通信の特徴のひとつに、第三者に傍受されにくいというものがあります。 今後人工衛星がさらに増える将来を見据えて、宇宙空間における光通信技術を確立しておくことは重要な課題と言えます。

光通信の特徴である高速データ通信。大容量のデータを一気に送受信できることが強みです。さらに「きらり」はレーザー光を細く絞って使用するので、電磁誘導ノイズの影響を受けない安定した通信が可能です。

仕様

「きらり」の仕様・打上げ

形状(Configuration) 約0.78m×1.1×1.5m(Approx. 0.78m×1.1m×1.5m)
質量(Mass) 約570kg(Approx. 570kg)
姿勢制御系
(Attitude Control)
三軸姿勢制御方式(Three-Axis Stabilized)
電源系(Power) 水素吸蔵型ニッケル水素電池 / 発生電力 1220W以上
(Nickel-Metal Hydride Battery / Generated Power more than 1220W)
ミッション期間
(Mission Duration)
約1年間(Approx. 1year)
実験運用軌道高度
(Experiment Orbit Altitude)
円軌道 610km(Circular Orbit 610km)
打上げ年月日 2005年8月24日
打上げロケット ドニエプルロケット

関連情報

インタビュー

用語集
ARTEMIS
LUCE

関連サイト
JAXAトップ「きらり」サイト
外部関連サイト
国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)
ESA(欧州宇宙機関)

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