地球を見る衛星(地球観測分野)
温室効果ガス観測技術衛星2号
「いぶき2号」(GOSAT-2)
プライムメーカ:三菱電機株式会社

ミッション
「いぶき」よりさらに高精度に温室効果ガスを観測
「いぶき2号」(GOSAT-2)は、JAXAと環境省(MOE)、国立環境研究所(NIES)の3機関による共同プロジェクトで、2009年に打上げた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の後継機です。
三菱電機株式会社がプライムメーカーとして、設計・製造を担当しており、協力して開発を進めました。
1997年の京都議定書により、先進国における温室効果ガスの削減義務が課せられ、温室効果ガスの排出量や森林による吸収量について報告することとなっています。
しかし、従来、観測手段や観測可能な地域が限定されていたり、また、データの集計方法や精度が各国で異なっていたりと、各国のデータを比較する上でも正確性や統一性に欠けるという課題がありました。
さらに、温室効果ガスの排出量に対する温暖化予測は不確かなものでした。「いぶき」はこれらの課題を解決すべく、宇宙から世界中の二酸化炭素及びメタン濃度を高精度且つ均一に観測することを実現しました。
また、その観測データを用いて、将来の気候変動予測の高度化や炭素排出量削減につながる、吸収・排出の推定精度向上を進めてきました。
「いぶき2号」(GOSAT-2)は「いぶき」ミッションを引き継ぎ、より高性能な観測センサを搭載して、さらなる温室効果ガス観測精度の向上を目指します。
「いぶき2号」(GOSAT-2)は「いぶき」の観測対象である二酸化炭素、メタンの観測精度を高めるとともに、新たに一酸化炭素の吸収・排出源の特定することも目的としています。
温室効果ガス排出量をモニタリングし、対策効果を検証し、削減対策を提案するためのアプリケーションとして「いぶき2号」(GOSAT-2)は位置づけられています。また、大気中における光の波長別透過度から、
PM2.5やブラックカーボン(黒色炭素。煤などを指します)の大気中濃度を推定することで、大気汚染の監視にも貢献します。
ミッション
ミッション1 地球の大ピンチ!温暖化
近年ますます進むといわれて言われている地球温暖化現象。
温暖化の影響は評価の途上ですが、温暖化による気温や海水温の上昇、それらに伴う海水面の上昇は気候変動に影響することが懸念されています。気候変動によって自然環境、生態系への影響や、農林水産といった人間社会への影響、また異常気象の増強、増加が引き起こされるのではないかと懸念されています。
ミッション2 健康被害を引き起こすPM.2.5
空気中に浮遊している粒子のうち、大きさが2.5マイクロメートル以下の粒子をPM2.5と言います。PM2.5は非常に小さいので、鼻やのどで止まらずに肺の奥にまで入り込み、大量に吸い込むと、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器疾患の原因になると言われています。
PM2.5は自動車の排ガスや工場のばい煙に含まれており、冬~春先にかけて、偏西風に乗って日本に多く飛来します。PM2.5の濃度を推定し飛来状況をモニタリングすることは、PM2.5対策に不可欠です。
一方で、現在一般的に提供されているPM2.5分布予測サービスは日本全域を実際に観測しているのではなく、特定地点(平成24年度時点で約440地点)の観測結果及び風の流れ等を計算し、日本全域での分布を予測しています。
人工衛星を用いれば大気中の光の波長別透過度を隙間無く全球に渡りモニタリングすることができるため、人工衛星によって得られた観測データをPM2.5の濃度換算アルゴリズムによって処理し、PM2.5の飛来状況を高い精度で広範囲に渡り把握することが期待されています。
ミッション3 国際協力体制の構築
世界各国で温室効果ガスを観測する人工衛星の開発・打上げが続いています。2014年にはNASAが軌道上炭素観測衛星2号、OCO-2(オーシーオー-ツー)を打上げました。 また欧州は2019年頃にCarbonsat(カーボンサット)を打ち上げる計画です。JAXAは2009年に打ち上げた「いぶき」や「いぶき2号」(GOSAT-2)を、これら海外宇宙機関の温室効果ガス観測衛星と連携して互いに観測データの校正や検証をすることを計画しています。 JAXA、そして「いぶき2号」(GOSAT-2)は国際協力のもと温室効果ガスの観測や気候変動への影響予測についてより信頼性や利便性を高めるよう努めていきます。
「いぶき2号」(GOSAT-2) の形状や搭載パーツについて
温室効果ガス観測センサ2型(TANSO-FTS-2)(タンソ-エフティーエス-ツー)
「いぶき2号」(GOSAT-2)に搭載している、温室効果ガス観測センサ2型(TANSO-FTS-2)は二酸化炭素の測定精度を「いぶき」の4ppm(1000kmメッシュ、3ヶ月平均)から0.5ppm(陸域500km, 海域2000kmメッシュ、1ヶ月平均)に向上させます。さらに、観測波長領域を追加したことにより、新たに温室効果ガスの一酸化炭素を観測できるようになります。
また、観測対象地点上空に雲がある場合、正確な観測が難しいことから自動的に雲がある領域を避けて観測する「インテリジェントポインティング機能」を新たに搭載します。
雲・エアロソルセンサ2型(TANSO-CAI-2)(タンソ-カイツー)
雲・エアロソルセンサ2型(TANSO-CAI-2)は光学センサであり、雲やエアロゾルの観測を行います。雲やエアロゾルは、TANSO-FTS-2が観測した温室効果ガスの観測データに誤差を与えてしまいます。そこで、TANSO-CAI-2の観測データを用いて、TANSO-FTS-2のデータを補正します。
仕様
「いぶき2号」(GOSAT-2) の仕様・打上げ
項目 | GOSAT-2(いぶき2号) | GOSAT(いぶき) | |
---|---|---|---|
ミッション機器 | 温室効果ガス観測センサ2型(TANSO-FTS-2) 雲・エアロソルセンサ2型(TANSO-CAI-2) |
温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS) 雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI) |
|
衛星 | 寸法 (パドル展開時) |
5.8m(X)× 2.0m(Y)× 2.1m(Z) (16.5m(Y)) |
2.4m(X)× 2.6m(Y)× 3.7m(Z) (13.7m(Y)) |
質量 | 1,800kg | 1,750kg | |
発生電力(EOL) | 5,000W | 3,770W | |
設計寿命 | 5年 | 5年 | |
運用軌道 | 軌道種別 | 太陽同期準回帰軌道 | 太陽同期準回帰軌道 |
軌道高度 | 613km | 666km | |
降交点通過 地方太陽時 |
13時00分±15分 | 13時00分±15分 | |
回帰日数 | 6日 | 3日 | |
打上げ年月日 | 2018年10月29日 | 2009年1月23日 | |
打上げロケット | H-IIAロケット40号機 | H-IIAロケット15号機 |